惑溺 【R-18】成人のみクリック閲覧可 果てなき闇の中、いさり火のごとく雄を惹き寄せるものが立っている。 裸の肩にショールを引っ掛けただけの淫蕩な有り様で、恵まれた肢体を幽艶に見せつけるその人は、おすわりをさせた私に「ご褒美だ」と蕩けるように囁いた。 玉の白脚が、すらりと眼前に伸ばされる。顎を持ち上げた爪先が、首筋を、鎖骨の間を、激しく鼓動する心臓の上を、劣情の炎でくすぐるように伝い降りていき、お預けの間にすっかり固く猛った私の欲の塊へ、しっとりと密に吸い付いた。 柔らかい五つ指と穢れなき足裏が、男根を擦りつけ、しごきあげては、はしたない先走りを纏ってぬらぬらとその珠肌を光らせている……。 「……という夢を見まして」 白みゆく空、上がりきらぬ己の瞼、目前におわすは愛してやまぬ東雲。 「ど、どうしてそれを私に報告するのだ……」 「正直は美徳ですので……」 「そ、そうか……」 ぱちぱちと瞬く合間も露と消えぬ麗人は、途方に暮れたような表情で、手にしていた書類を現在進行形で床にぶちまけている。拾い集めてお手元にお返しする際に、さり気なく手袋を外して包み込むように撫で申し上げ、滑らかな手の甲を堪能させていただいた。 「夢の中の貴方も麗しゅうございましたが、現のマツブサ様は夢も理想も遥かに超えて、世界を照らすただひとつの光であらせられると、今改めて実感しております」 「お前さては寝不足だな?」 「その凛乎たるお姿と貞淑な佇まいが、一介の部下たらんとする私に却って身を焦がすほどのエロティシズムを想起させ」 「いいから早く出発しなさい」 「はい」 なんて仲睦まじく見つめ合い、そわそわと襟足を撫でるばかりで身の入らぬ様子の主君に後ろ髪を引かれつつ、出立したのが今朝の出来事。 お天道様座すえんとつ山のてっぺんで、目的の隕石はマグマに沈み、ものの見事に任務失敗。 業務過多による睡眠不足と欲求不満が祟ったなどと、口が裂けても言えるはずがない。己の怠慢に内心しおれて帰路につくと、生涯を賭してお仕えする主君であり、私の帰る場所であるマツブサ様は、帰還した我々をにこりともせず出迎えた。 今朝は優しく輝いて見えた鮮やかな赤髪も、今ばかりは目に痛い。 「ボルケーノシステムを滅失。挙句、隕石も手に入れられず」 「はっ……。申し訳ありません」 「お前がついていながら、ソライシなどに遅れをとったのか」 「申し開きのしようもございません」 「ふん……」 かつ、かつ、かつん。 丁寧に整えられた爪先が、磨きぬかれたオークのデスクを弾いている。真っ向から睨めつけられて微動だにしない私の隣、青褪めた部下が、びくりと身体を震わせた。 日頃のにこやかさはどこへやら、主君は冷ややかな面差しで沈黙し、我らに発言権はない。広々とした執務室に、不機嫌なリズムだけが響きわたる。 かつん、かつん、……かつん。 どこまでも重苦しい音が止んだ。静寂が我々を囲みこむ。苛烈な眼差しは、かわらず私を射抜いている。 自惚れではなく、私はマツブサ様からいっとうのご寵愛を受けているという自負がある。だからこそ、対峙する部下を萎縮させるように黙りこむ姿がらしくなく、申し訳なさよりもその様子が気がかりで息が詰まった。 張り詰めた空気を隔てる展望窓の向こう側では、キャモメの群れがのんきに晴天を泳ぎ回っている。燦々と降り注ぐ陽に照らされて輝く主君の色なき眼差しが、私を逃して隣の部下へぎろりと向いた。 麗しい唇が薄く開いて、沈黙に終止符を打った。 「君はもう下がっていい。ホムラは残れ。話がある」 「はっ」 ひ、と部下が息を呑んだ。はいと応えようとして、惨めにも失敗したようだった。 隊長に責任を負わせて退出してよいのだろうか、なんて憂慮の見えるおどおどとした素振りで、部下がマツブサ様に背を向ける。その丸まった背中に、怜悧な声がざくりと刺さった。 「朝までこの部屋に誰も近づけるな」 か細く上がる短い返答。地獄の仕置きでも思い浮かべたのだろう。ひどく狼狽した部下は、私の身を案じるような目配せを最後に、もつれる足取りで去っていった。 礼を失した音を立て、重厚な扉が閉まる。そうして、二人だけが密室に残された。 ──当の私はといえば、声を上げて笑いだしてしまいそうだった。 夜がな夜っぴてマツブサ様とご一緒できるだと! 罰どころかとんだ恩賞だ。心の弾む音がする。お前の上司に待ち受けるのは極楽の褒美だと、哀れな脱兎に大声で教えてやりたいほどに。 マツブサ様が腰を上げた。すらりとした長身がデスクを回りこみ、後ろ手に仁王立つ私の方へゆっくりと歩を詰める。赤髪がしゃらりと揺れて、小首を傾げた厳めしい双眸が至近距離から覗き込んできた。 「……さてホムラ。どう埋め合わせをしてもらおうか」 「はっ。どんな罰も甘んじて受ける所存です」 「ふ。今にも庭を駆け回りそうな顔をして、罰を受けるもなにもあるまい!」 自慢のポーカーフェイスも、この方の前では型なしだ。顎を下げずに見つめる先で、口をへの字に結んでいた主君が破顔した。途端に周囲がぱっと明るく華やいでいく。 どうやらご機嫌をなおしてくださったようだ。 知らず安堵の息をつく私の周りを、後ろ手を真似して茶目っ気いっぱいのおみ足の、ポチエナのように弾む足取りがくるくるまわる。どんな心境の変化かはわからぬが、打って変わって喜ばしそうなお姿にハテナが浮かぶも、その様子がお可愛らしかったので、見惚れて思考を放棄した。 「玩具を壊して尾を振る雄犬には、きつく灸をすえてやらないとな」 「はっ……」 沙汰を待つ私の顎を、指先がついとなぞって離れていった。ときめきもあらわに視線で追うと、洒脱な長衣を翻してくるりと一回転、踵をそろえてこちらに向き直ったマツブサ様が、まばゆい笑顔で両腕を広げて私を招いた。破壊光線顔負けの、凄まじい威力がこの身を襲う。 ちかちかと目を眩ませながらお招きに応じようと足を踏み出すと、辻斬りのごとき勢いでマツブサ様の方から飛び込んできて、ぎゅうっと抱きしめられた。清らかな香りが鼻孔を満たす。震え慄き、無上の愛くるしい存在を捕らえようと両手を回すも、一足遅く華麗にひらりと逃げられた。 そうして、わずか数秒の犯行で男を煽りに煽った通り魔様は、応接ソファにぴょんと腰を落ち着けた。お尻からソファに飛び込むなんて真似、お行儀が悪くて、一生の思い出に残るくらい、とんでもなく愛らしかった。 若者の動揺などなんのその、マツブサ様は優雅に脚を組み、口元に指を添えて私を呼んだ。 「座りなさい。ほら、ここ」 マツブサ様が座る横、優に二人分は空いたそこを、ぽんぽんと白い手が叩く。遠慮がちに隙間をあけて腰を掛けると、ぐいと身が寄せられて、太ももの側面……どころか、二の腕に至るまで密着してしまった。次いで、華奢ながらも貧相とは程遠い身体がしなだれかかってくるものだから、腰に手を回して抱き寄せれば、高鳴る胸板にそっといたずらな手のひらが置かれた。 視線を上げると、マツブサ様のかんばせが、くちづけをねだるような近さにあった。慈愛に満ちた眼差しが、吐息さえ混ざる距離からこちらを見つめている。波打つ鼓動を確かめるように、滑らかな熱が私の胸を撫であげる。 「灸をすえるなど冗談だ。今回は、ボルケーノシステムが実用に足るということがわかっただけで十分だからな。そんなことより、お前がソライシごときに土をつけられたことの方が心配なのだよ」 「寛大なお心遣い痛み入ります。……ですが、あの、マツブサ様……先程まで怒っていらっしゃいました、よね?」 「ん……」 睫毛が伏せられて、気品に満ちた唇がつんと尖った。拗ねた口ぶりが、羞恥をのせてぽつりと落ちる。 「ホムラが急にエッチな話をするから、期待に応えようと思って待っていたのに……、お前ときたらそんなことも忘れて、しょんぼりした顔で帰ってくるものだから」 「ま、マツブサ様……!!」 「まあ、かわいいお前を見ていたら、怒りなど吹き飛んでしまったが」 私の呼吸にあわせて上下する団のシンボルマークの上で、シミひとつない手のひらが、欲に濡れた手つきで薄布越しの胸筋を味わっている。どぎまぎと身を固くしていると、タンクトップの裾をつまんでできた隙間から白い指がすいと侵入し、直に腹筋をなぞられた。ごくりと喉が鳴る。 粟立つ素肌の上を歩く手のひらが、裸の胸に吸い付いた。勿体ぶった手つきで、柔らかく揉まれる。色鮮やかな欲望が、ぱちぱちと視界で爆ぜた。 「仕切り直しだ」そう言って、マツブサ様が唇すれすれのところにちゅうとキスをする。 舞い上がって奥ゆかしい唇を迎えに行くと、私の舌を甘ったるく吸って瞼を閉じたその人の指先が、優しく乳首をつまみ上げた。慣れない刺激がなんとも面映ゆく、こそばゆさに上体が揺れる。 報いるように、マツブサ様の大好きな上顎を可愛がろうと口づけを深めると、頭を振って逃げられた。一方で、私の乳首は相変わらず摘まれている。 気持よくしようとしてくださっているのはわかるが、焦れったさが頭をもたげた。 「あの、申し訳ないのですが、そこはあまり……」 「えっ、そうなのか? こうされたら、私はすごく気持ちいいのだが……」 「………………」 勝手知ったる可愛い小粒を、服の上からつまみあげる。 「あっ! こらっ、やめなさい」 「不可抗力です」 ぺちんとはたかれ一時撤退する。すぐさまリベンジしようと両手を差し向けると、照れくさそうに身を捩る主君から「がっつくな。私からしてあげるから、ちょっとだけ我慢だ」なんて絶大な効力を持つ意地悪をいただいた。 「マツブサ様……」 「ここ最近働き詰めだったから、疲れているだろう。労ってやる」 言うなりこちらに向き直ったマツブサ様が、ずりずりと膝で移動して私の上に乗り上げてきた。柔らかなお尻が腿に座る。躊躇いつつ柳腰に手を添えると、ほんのり色づいたお顔がこちらを見つめながら、見せつけるように大きく開脚した。蠱惑的な振る舞いに唾を飲む。 胸板を離れた手のひらが、臍周りをなぞりながら下がっていって、身を震わせた私のベルトに指をかけて静止した。 「お前はいつも私に奉仕しすぎなのだ。たまにはすべてを委ねてみなさい」 「はっ、しかし……」 「いい、日頃のお返しだ。前後不覚になるまで甘やかしてやろうじゃないか」 カチャカチャと音を立てて、不慣れな手つきが金具を外す。うきうきワクワク、心から楽しそうなご様子で、私のボトムに手をかけている。 引きぬかれたベルトがフロアマットに落ちていくさまを夢見心地で眺めていたが、はしゃぐ指先がファスナーを下げようとしたところで、我に返った。手首を握って待ったをかける。 「ま、まだシャワーを浴びておりません」 「うん? それがなにか」 「一度その、身体を流してきても……」 ぐるり、握った細い手が裏返って、私の手首を生温かい熱が包みこんだ。 「構わん。このままいいようにされたまえ」 「い、いけません……」 「そんなに物欲しそうな顔をされては、こちらだって我慢がきかないよ。私に待てと言うのか? なあ、ホムラ……」 幼子をあやすように、柔らかく額へ口付けられた。続いて、軽いリップ音とともに、頬に愛らしい口付けが。悪魔のように艶治な指で男の顎を上向かせ、屈みこんでこちらを伺う可愛い人は、私の唇をやわく食んで「キスしなさい」と囁いた。 これほど凶悪に誤魔化されては抗えず、分厚い舌で上品なそこをこじ開けて、敏感な粘膜を丁寧に愛撫する。くふくふと嬌声を漏らして身をくねらせるマツブサ様の指が、とん、とん、と私の手の内を歩いていって、しまいに指の付け根をこしょこしょとくすぐって、再びボトムに手をかけた。 口腔を味わっていた舌先を焦らすように甘く噛まれて、魅惑のくちびるが離れていく。 「マツ、」言いかけて、耳に熱い吐息を吹き込まれた。ぞくぞくと震えた私の首筋に、愛らしい白い歯がかじりつく。そして、熱に疼く身体の中心、はっきりと兆したそこを服の上からさすり上げられて、下肢が震えた。 「う、ぐ」 「ほら。ここは触ってもらえて嬉しそうだぞ」 口端を上げて勝ち誇る、その上気した頬が、期待に濡れた眼差しが、私を興奮の淵に追い立てる。ぐっと握りこまれると同時に、首筋をなぞりあげた唇に耳を食まれた。 「は、あっ」 「ふふ。お前は耳が弱い」 ジジ、とかすかな金属音が聞こえた。大きく前をくつろげられる。みっともなく下着を押し上げる熱を見つめて、マツブサ様がはあと火照った溜息をついた。 たおやかな指が、膨れ上がったそこを弄ぶ。こしょこしょ、つんつん、さわさわと、布地にシミの浮くほど脈打つ分身をしばらくそうして遊ばれて、唐突に、ぐいと下着を下ろされた。滾った逸物がぶるんと飛び出す。あらわになった私の怒張が、品なく天を向いている。 目元を赤くしたマツブサ様が、うっとりと喉を鳴らした。高貴な指が、逆手にゆっくりと灼熱を撫で上げて、カリのくびれをかしかしとくすぐった。 一方的に暴かれる感覚にたまらず細腰を強く掴んでしまい、マツブサ様の「あっ、ン……」と感じ入った吐息が私の耳を悦ばせた。 「だーめ。労うと言っただろう? じっとしていなさい、ステイ」 「ふ、う、……っは、い……」 「いい子だ。お前に触られたら、なんにも考えられなくなってしまうからな……」 待てを命じられた忠犬は、ただじっと期待して、ペニスの先から涎を垂らすことしかできない。 ご主人様は、肉欲の塊をいやらしく撫で回し、ぷくりと滴る先走りを人差し指に塗りつけて、鈴口をにちにちといじめながら、典雅に笑んでくちびるを一舐めした。 「手で、と思っていたのだが……ホムラ、舐めてもいい?」 「お、お口でそんなっ……、していただけるんですか」 「いいぞ。たくさんぺろぺろしてやろう」 「シャワーを浴び」 「しつこい。私は今すぐしたい」 「ゴムを」 「生がいい。ホムラの味が知りたい」 「んぐぅ……」 己の口をバシッと手で塞ぐ。ときめきでのぼせて死にそうだ。 ギンギンに主張するそれをすべすべの手でしごきながら、マツブサ様がゆるりと腰を引いた。小鳥がついばむような口づけをひとつ、腿に乗っていた熱がひいて、魅惑の体躯が足元に下がっていく。私の太ももに手をかけたマツブサ様が、足の間にぺたんと座り込んだ。 肉棒に手を添え頬寄せて、仔エネコのごとく愛嬌たっぷりに笑うマツブサ様……暴力的なまでに素晴らしい光景だ。……が。 「お、御身が跪くなど……!!」 「ひどいホムラ。私のすることが不服だなんて……」 「すみません大歓迎です」 「だろうな。正直でよろしい」 やられた。もとより逆らえるはずもないが、私はマツブサ様の望むまま咲き乱れる、盛りのついた雄犬だ……。両手で顔を覆うも、指の狭間から見えるマツブサ様は極上の笑顔でグロテスクなそれにキスをして、私を慰め昂ぶらせていく。 やにわに、指でぴんとペニスを弾かれた。楚々としたくちびるが、筋の浮く竿を横からかぷりと食んだ。 「っ、マツブサさま……」 「おっきくって、咥えられそうにないな……。ふふ、顎が外れてしまいそうだ」 「はぁっ……、かわいい、お可愛らしいです、マツブサ様」 「かわいいのはお前の方だ。ここをこんなに膨らませて」 マツブサ様が、うっとりと男性器に頬を擦り寄せた。唾液をまとった舌先が、私の卑しい末端をぺろりと味見する。 そして、男根を握りしめ、伏目がちに恥じらうお顔が、ちうと先端にキスをした。喉奥から獣のような唸り声が出る。何度もくちづけを落とされて、透明な粘液が桜色の唇との間に糸をひいた。先走りを絡めとるように舌でぺろぺろと舐められて、ますます粘ついた欲望がとろけ出していく。 てらりと光る唇が花開いて、貞淑にも淫猥にも満ちたそこが先っぽを咥えた。快感が背筋を走る。濡れそぼった口腔が先端を包み込むも、優艶で慎ましいお口ではひと息に飲み込めないようで、ゆっくりと亀頭がぬかるんだそこに覆われていく。マツブサ様の頬がぽこりと膨らんで、ぎらつく目線が釘付けになる。 「マツブサ様ッ……! っはァ……」 「んく」 麗しの細面が、男を咥え込んだまま、ころころとお笑いになっている。その可憐な振動がダイレクトにペニスを刺激するものだから、歯を食いしばって快感を受け流した。 心休まる暇もなく、膨張したそこをちゅぷちゅぷと食まれたかと思うと、ちゅうとすぼまって熱く吸われる。息を詰めたところで、根本を押さえていた両手の指が裏筋をこすりあげ、舌先がぬるぬると割れ目をなぞって往復した。 「うっ……、き、もちい、です……、っは……」 私の喘ぎ声を受けて、愛しい瞳が嬉しそうに細められた。少しずつ喉奥に咥え入れられて、溜まった唾液を飲み込んだ喉に亀頭が絞られ、腰が跳ねそうなのを必死に抑える。喉奥を突き上げるなど以ての外だ。快楽の奔流が、全身を駆け巡っている。 鼻息荒く、無沙汰な手で乱れた赤髪を耳にかけ、頭を撫でて差し上げる。得意げな上目遣いと目があった。欲望がずしりと質量を増す。 マツブサ様が頭をひいて、熱く熟れた口腔からペニスがまろびでた。ひやりとした空気が触れて、けれどすぐに、弧を描いたくちびるが根本に吸い付いた。やわく蠢く舌とともに、下の方から幹をはむはむと伝いのぼっていく。 凄艶極まる可愛い人は、「かわいいな……」と蕩ける吐息で肉竿を撫で、かぱりと開いた赤い口で、亀頭を飲み込んだ。 「っう、あ!」 みっともない声が出た。しとどに絡みつく舌が、淫らにうごめく肉壁が、固く張り詰めた肉棒にむしゃぶりついて、奥へ奥へと咥え込んでいく。微かに苦しげな表情で、時にずろりとこうべを引いて、ぐうっと深く顔を埋めて上下する、そのたどたどしく懸命にご奉仕くださるお姿が、狂おしいほど胸を打つ。 「ふっ、はァ、ま、つぶさ、さまっ……」 「ん、ぐ、……っむ、」 くちゅくちゅ、ぬぽぬぽと、上品なくちびるが奏でる品のない音に血肉が滾る。 太ももの横で握りしめた私の拳に、竿をいじめていた手のひらがぺたりと覆いかぶさった。指を絡ませる。繋いだ手が愛に汗ばみ、ぎゅうと吸いついて一つになる。 耳まで真っ赤に染めて涙を滲ませた上目遣いが、ゆっくりとこちらを仰ぎ見た。 「う、ぐ、ま、マツブサさま、もうっ……、ッ……!」 「んぅ……」 悦楽にとろんと蕩けた微笑みが、私を絶頂に導いた。 果てる寸前、繋いだ手をほどき、華奢な両肩を掴んで引き離した。ちゅぽんと音を立てて解放された先端から白濁が迸り、咄嗟に目を瞑ったマツブサ様のお顔に降りかかる。 ばくばくと心音が鳴り響く。眼前に広がる絶景に、ごくりと喉が鳴った。 マツブサ様の火照り顔が、私の精液に濡れている……。 うぶな瞼がそろそろと開いて、数度瞬いてから、握りなおしたペニスの先を尖ったくちびるがつんとつついた。くすぐったさと愛おしさが、後ろめたさを凌駕する。 「ま、まつぶささま、申し訳ありません……。目に入っていませんか?」 ポケットから出したハンカチで頬を拭く傍ら、マツブサ様の指が、塗り広げるような動きで口元を拭う。蜂蜜でも嗜むように、白濁を可憐なお口が舐めとった。 「大丈夫だ。少し驚いただけで、ん……」 「ああっ、お舐めになってはいけません」 「お前はいつも飲んでいるではないか」 「私はよいのです。マツブサ様のものは一滴残らずいただきたいので」 「ホムラばかりずるいぞ。もう一回だ。今度はちゃんと私の中に出しなさい」 私の中……。マツブサ様の手の内で、素直な愚息がグンと反応した。 先程まであんなにいやらしくしゃぶっていた人が、わ、と小声で驚いて、恥ずかしそうに眉尻を下げた。それなのに好奇心いっぱいな手つきで揉まれて、男の象徴が再び硬度を取り戻していく。 おまけに上目遣いで玉をぺろんと舐められて、んぐうと唸った男心を知ってか知らずか、仕草ひとつとっても悪質な主君は「ホムラのエッチ……。本当に私のことが大好きなのだな」などと言い放ち、頬を染めてはにかんでいる。 「はっ、大好きですマツブサさま」 「私も好き。だが、奥までは咥えられなかったな。すまない」 「いえ、天にも昇る心地でしたので、お気になさらず……」 「そう? じゃあ次は本当に天に昇らせてあげようか。ふふ」 口を引き結んで愛を飲み下す。 男の情動をよそに、ふわついた小さな舌が、ガチガチに復活した剛直の先を舐めだした。ご褒美に息を乱しつつ、美味しそうにしゃぶっていらっしゃるこのお顔、見覚えがあるような……と首をひねって思い出した。大好物のアイスクリームを握りしめ、幼子のように夢中で味わっていらっしゃった時の、あの幸せそうな表情だ。 気づいた瞬間、体中がのぼせ上がった。 「マツブサさまっ……」 「いつも私ばかり気持ちよくしてもらっているからな。今日はお前が満足するまで、好きなだけいじめてやろう」 「っく、光栄、です……」 愛する人の繰り出す言葉が、急所を抉って突き刺さる。これ以上興奮させられてはたまらないと、獣めく両目で睨めつけたところで。 「……なんてな。本当は、私がたくさんしてみたいのだ。さっきも舐めていただけで、気持ちよくなってしまって……。はしたないが、ホムラとこうするのを、朝からずっと楽しみにしていたから」 えへへとはにかみながら、容赦無い追撃。 すんでのところでこらえていた理性が、あっけなく消し飛んだ。 「マツブサさま」 「なんだ?」 「お覚悟ください」 「えっ?」 ソファの背もたれを倒し、ベッドへ様変わりしたそこへ魅惑の痩躯を引っ張りあげて、俊敏かつ丁重に押し倒した。 のしかかった己の腕の中、まんまるに見開かれたお目目が私を見上げて瞬くが、お咎めをいただく前にとっておきの愛でくちびるを塞いだ。 「んむ、っふ、ンン……!」 薄い唇をくにくにと食み、火照った吐息ごとねぶって味わう。ふわりと開いたくちびるのあわいに侵入を果たして、さきほど可愛がることの許されなかった上顎をねっとりと蹂躙する。力を抜いた舌先でくすぐるように愛撫して、合間に可愛い舌をすくいあげては踊るように絡ませ合って、キスが大好きなマツブサ様の心も身体も満たして差し上げる。 口内を可愛がれば可愛がるほどとろとろに開花されていくマツブサ様は、恍惚とした表情で舌を震わせて顎を上げ、私に犯されるのを求めるように動きを追っていらっしゃる。 くっと口端が上がるのを自覚した。私の愛するご主人様は、ことさら快楽に弱くどこまでも私に甘い……。 「んっ、んぅ、……」 鼻にかかった嬌声が私を呼ばう。わずかに腕の動く気配を感じて、両手の指を絡めてソファに縫い止めた。両腿を膝で挟み込む。鍛えぬいた躰の檻に閉じ込めたって、雁字搦めに囚われているのは己の方だ。みだりがわしい水音に犯され、呼吸の追いつかぬほど昂ぶっているご様子に、唇を解いて幾つものくちづけを降らせる。白雪のごとき肌、紅潮した頬、透明な雫をたっぷりと湛えた目尻に、万感の想いを込めて。 服の上から胸の先端をひっかく。生白い顎がびくんと上向いた。垂涎の首筋へかぶりつき、手慣れた手つきで服の釦を外していく。 何回何十回とこの身を許された私にかかれば、輝く素肌にお目通り叶うまでものの数秒もかからない、が。 「待て」 「……ッ! う、」 頭で理解するより早く、反射で身体が固まった。 瞠目した先で、か弱く喉元を晒すばかりに見えた獲物が、燃え盛る眼でこちらを見ていた。先ほどまで確かに翻弄されていたはずだ、それなのに。 肩で息をするマツブサ様がわずかに頭を持ち上げて、こつりと額が合わさった。くろいまなざしがニタリと笑んで私を穿つ。 「自分で脱ぐ。私のストリップなんて貴重だろう? じっくり鑑賞するといい」 「ま、マツブサ様……」 「脱ぎ終わるまで、そのおっきなもので遊んでいなさい」 「っは……う、」 呆然と静止するなか、繋がったままの右手が己の男根へと導かれていく。絡んだ指がひとたび離れて、手の甲を覆われたかと思うと、自らの逸物を握らされた。それから、年端もいかぬ男児に自慰を教えるかのような手つきで、こし、こし、と優しく揺すられて、とうに膨れ上がったそこがびくびくと脈打った。 「ほら、ごしごし……ゆっくり、ゆーっくり、出しちゃダメだぞ。ふふ」 劣情が口から滴り落ちそうだ。みっともなく鼻息を荒くする私を見て、喜悦に瞳を細めたマツブサ様が、ぐいと上着の合わせを開いた。胸の先までほのかに上気した抜けるような白肌がこぼれだし、横っ面を張られたような衝撃に戦慄いた。 まさか、素肌に直接羽織っていらっしゃるなんて……。 ごくりと喉が鳴る。つんと主張する胸の頂きを逆上せた頭で見つめながら、激しく手の内の自身を抜き上げた。 マツブサ様は焦れったく身を捩りながら、もたもたと袖から片腕を引き抜いている。とてもストリップなどと呼べる有様ではなく、むしろそんな下品なものより男の心を穿って離さぬお仕草に、握りこんだ剛直の先からますます歓喜の雫が滲みだした。 しばらくそうして、薄い腹やくびれた腰をねじって仰け反り、奮闘の末ようやく上半身だけ裸になったマツブサ様が、にこ、と照れくさそうに微笑んだ。 己を組み敷きペニスをしごく男に向かって、上手に脱げたぞ、さあ褒めなさいみたいなお顔で。 「ぅく、は、マツブサさま、まつぶささまっ……」 「偉いぞホムラ。もう少しだけ我慢できるな? うんと気持よくしてやるから……」 「っは、う、うぅ」 倒錯的な状況が言葉を奪う。 触れたい、舐めたい、味わいたい、唇で辿って吸い上げて、指先でなぞって蹂躙して、余すところなく堪能させていただきたい。それなのに、手を出してはならぬ、欲を解放させてもならぬと、極まらない程度に竿を扱き上げることしかできず、鈴口から耐え忍ぶ涙がつうっと落ちる。 それがマツブサ様の下衣を汚してしまうと思い至らぬほど、お預けをくらった頭は茹だって靄がかり、顎先を伝い落ちた汗までもがぽたりとマツブサ様の口端を叩くも、あ、と瞬く間に、淫猥な舌がぺろりと私の体液を舐めとった。 「辛そうだな……。健気で可愛い犬には褒美をやろう」 「あ、ま、お待ちくださ、ッう、はァ……ッ!」 優しさを装った凶悪な指先が、カリをこしょこしょとつまんで遊びだした。そのまま手のひらで亀頭を覆われ、粘液で滑る熱い肉にねちねちとこね回される。あらん限りのプライドで抑えこまなければ、今にも爆発してしまいそうだった。 「ア、はっ、マツ、くぅっ……!!」 「ふっ、は……そう、待てだ。いい子いい子……」 血管が切れそうだ。ぐらぐらと男を煮え滾らせるマツブサ様のもう一方の手が、そっとご自身の胸元に寄っていく。未だ下肢の脱衣にとりかかる気配すら見せず、これでもかと私を地獄の責めで苛んでおきながら、乳首へとたどり着いた指先が、魅惑のそれを引っ掻いてはくにゅりと摘んで、最高のひとり遊びをはじめてしまった。 「ん、あっ、ホムラ、ほむらっ……あっ、ンぅ……」 「~~~~ッツブサ様ぁ……!!」 ぴんと尖った乳首が、くにくにと押し潰されて形を変える。 お預けをくらわせた犬と見つめ合い、貞淑を形にしたような指で桜色に染まる乳首をいじって、嬌声を溢れさせては善がる淫乱な飼い主さまは、蕩ける笑みでくちびるを舐めて湿らせた。 「はぁっ……出したいか、ほむら……? ン、ふふ……かわいそうに……」 憐憫を口にした美貌が、艶やかに濡れた眦にシワを寄せた。 くちびるを極上の愉悦に歪めて、心の底から楽しくてしかたがないという風に。 激しく震えた左腕が自重に屈して、マツブサ様の上にどさりと倒れ重なった。きゃうんと子犬のような息遣いののち、下敷きになった主人が耳元で可憐に笑う。 両腕に背中を掻き抱かれ、首筋に熱く吸い付かれた。 「はっ、はーっ、ウッ……! まつぶささまぁっ……!!」 果てなき快感が迸り、勢いよく体外へと溢れ出た。 ばくばくと暴れる鼓動が、密着した主人の胸を叩く。愛しい身体に覆いかぶさったまま、ぜえぜえと全身で息をする。 余韻を噛んで、白い項に鼻先をくっつけて思いきり吸い込んだ。清楚で芳醇な、男を包み込むマツブサ様の芳香に、心も肺も満たされていく。 大きな飼い犬にじゃれつかれたご主人様は、可笑しそうに、愛おしそうに、耳元で「待てを破ったな……悪い子だ」なんて囁いて、優雅にくすくすと笑っている。 ひときわ愛のこもった強さで抱きしめられて、たまらず火照った痩躯に縋り付いてくちびるを貪った。 「んちゅ、う、……んく」 熱い手のひらが背を滑り、か弱くも必死さの滲む力で、タンクトップを握って引き寄せた。望まれるまま身を寄せあって、絡みついてきた舌を吸い上げ歓迎し、好きなだけ口内を貪りあう。私の手管を真似ているのか、たどたどしく歯茎をなぞる舌先が愛おしい。下腹を快感の炎が舐める。 マツブサ様のなだらかな胸板が大きく上下するのを感じて、優しく舌の根をすくい、惜しみながらくちびるを解いた。 真っ赤に熟れた口腔、とろける吐息、熱に浮くまなざし、あられもない痴態に、体の芯まで熱に侵される。 耳元から首筋にかけてちうちうと執着の痕をつけながら、しっとりと汗ばむ胸を両手で揉むと、マツブサ様がくすぐったそうに身を捩らせた。昂ぶるままに肌を食む。 「っん、あまり、痕をつけるんじゃない……」 「ご安心を。お召し物で隠れます」 「そうじゃなくて、あっ……見るたび、思い出してしまうだろう……」 「……忘れられないよう、毎日つけて差し上げますよ」 「それは……いやじゃないから、こまる……」 恥じらいにけぶる瞳を逸らして、ぽつりとそんな愛を吐く。喉笛に食らいつきたい衝動に駆られるが、甘く噛むにとどめて、従順な獣のふりをした。牙を突き立てて奪うより、丁寧に可愛がってとろかして、この人のすべてを仕留めてしまいたかった。 男の膨れ上がった執着にねぶられてなお高嶺に咲き誇る人の手のひらが、つうとひそやかに背筋をなぞる。頬に吐息を感じ、キスをくれるのかと期待した瞬間、とっておきの囁き声が鼓膜を撫でた。 「私のかわいいホムラ。くちびる以外でも、もっとお前を感じさせてくれないか……?」 ゼロ距離で放たれる、とどめとばかりの、はにかむ笑顔。 眩すぎて世界が霞んだ。 「はっ……!!」 灼熱の幸福が全身にこだまする。沸騰する愛と欲望に満ちた手つきで柳腰をなぞり下ろせば、生白い肌がぴくんとさざめいて、淫猥な吐息が空気に溶けた。 身を起こし、背から白い手が滑り落ちたのを惜しむ暇もなく、中途半端にわだかまっていた衣服をすべて脱ぎ去る。マツブサ様の下肢も露わにしようと手をかけると、唇にひたりと人差し指の静止がかかった。 息を呑む。艶やかなくちびるは何も語らず、ただ、情欲を孕んだ瞳が笑んでいる。 この期に及んで、まだ焦らすおつもりか。 すぐにでも善がり狂わせて差し上げたいのに、きっとまた『可愛がられて』しまうのだ。けれどその予感にも昂ぶるばかりで、逞しい身体を華奢な身体にぴたりと重ねて、思いきりベッドに埋めた。 「ぅぐ」と唸ったかわいい人に、にこりと笑顔を差し上げる。手出しを禁じられようとも、奉仕する方法ならいくらでもあると、思い至っていただくために。 厚い胸筋で薄い胸の頂きを押し潰すと、マツブサ様が可憐に鳴いた。 「あっ、重いぞ……こら、こすっちゃ……ア、ん、んぅっ」 互いの肌が吸い付いて、しっとりと皮膚が惹かれ合う。尖りきった乳首を愛で転がすように、押し付けた上体をねちっこく揺り動かす。先端同士を合わせるように擦ってみれば、「あっ、もっと……」なんて素直にねだられた。抗議のつもりだったのに、感じ入る様子がただ嬉しくて、ますますご奉仕をしたくなる。 二人して、前戯だけでどろどろだ。ずっとこのまま、という澄んだ思いと、奥の奥まで受け容れてほしいという欲望が煮えたぎる。そこに、「は、ぁふ、あ、」と喘ぐくちびるに天使のようなキスをされて、やはりくまなく犯し尽くして差し上げなくては、と怒涛の勢いでペニスに血が集まっていく。 「っんン、やっ……も、気持ちよくってダメだ! ふふ……」 「おみ足も、可愛がらせてください、まつぶささま」 「あはは! あっ、ン……いいぞ、好きにしなさい」 「はっ……!」 待てが解かれた! 早急に下肢のお召し物に手をかけて、湿った感触に気がついた。外側を私の白濁に穢された黒のスラックス、その股間部分が、内側からしっとりと濡れている。思わずお顔を見つめると、口元を隠すように翳された手指の隙間から、美しく白い歯がこぼれた。 「んっ、ホムラ……。私、触れられてもいないのに達してしまったのだ。濡れて、きもちわるいったら……。ふふ、脱がせなさい、はやく」 「ああっ、マツブサ様……」 いたずらな笑顔がまばゆく光る。腰を掴む私の手を、たおやかな指がなぞって離れた。 性急に、けれど恭しく、衣服をずり下ろす。マツブサ様は、お尻をわずかに持ち上げると、服を抜かれるのに合わせて、爪先で宙を掻いた。 下着を履いていらっしゃらない、頭ではそうわかっていたが、実際に瑞々しい生肌がお目見えすると、鮮烈に心が眩んだ。 頭をもたげる綺麗なペニスをじっと見つめる。伸ばされた手がそれを覆い隠した。ちらと見やれば、上気した頬が、むっとむくれて先を促している。 可愛らしくて、つい声をこぼして笑っていると、愛しいくちびるがますますツンと尖っていった。へそを曲げられてしまわぬうちに、引っかかっていたスラックスと靴下を抜いて放る。丁寧な手入れの賜物、年の頃を伺わせない美の象徴たるおみ足が、つまびらかに目前に晒された。 私を魅了してやまない人の、艶やかな腰のライン、そこからすらりと伸びる脚、喉から手が出るぐらい欲してたまらないそれらが、お好きにどうぞと差し出されている。 愉悦に喉を鳴らして、腿からつま先まで指でなぞって味わう。張りのある、絹のような手触りだ。視線を合わせたまま身を引いて、形よい爪先を優しく咥えた。 夢にまで見た『私の』足だ。繊細な飴細工を味わうように、熱い舌で包んで甘やかす。 マツブサ様がぞくりと身を震わせた。花のかんばせを見つめたまま、口に含んだ指を、爪の形のわかるほど念入りに、指の股を溶かすほどしつこく、ねぶって吸って慈しむ。 「あ……っ、そこばっかり、やめなさい……」 そんな風にたしなめながら、まんざらでもなさそうに色づいて、視線はこちらを捉えたままでいる。咎められようと、吸い付かずにはいられまい。 一本一本順繰りに舐めあげて、指の付け根の窪みから白い足裏の盛り上がりまで、丹念に舌を這わせる。マツブサ様の吐息が甘く掠れていくのに口端を上げて、親指と人差指の間のやわい皮膚をねぶり犯し続けていると、耐えかねたようにつま先が逃げていってしまった。 口の中が寂しくなって、けれどすぐに舞い戻ってきたふやけた足指が、目の前でぐねぐねと動いてみせて、私の顎を持ち上げた。 「しゃぶってばかりいないで、ほら……。大好きなコレで、どうしてほしいか言ってみなさい」 「は、ア、……もっと、触れたい、触れてほしいっ……です」 「触れるだけ? ……」 真白い足裏が、首筋をぺとりと吸った。窪みが気持ちよく合わさるところを探すように、柔らかなそれが鎖骨の上を這っていく。私の肩口を蹴遊ぶのにあわせて、しなやかなふくらはぎが盛り上がって美しさを知らしめる。 懇願の言葉をこぼしかけた口を、土踏まずが塞いで覆った。こみ上げた恋慕が喉奥に詰まって息苦しい。何もかもを許すような微笑みに見守られ、淫欲まかせの舌使いでべろりと舐める。 「あっ、……こぉら。めっ」 くすくすと甘やかな声とともに柔肌が口元を発って、淡い血管が浮く足の甲、まろみのある踵、ぷくりと膨らむ血管をのせたくるぶしが翻り、余すことなく魅せつけられる。目も心も奪われる中、つま先にこしょこしょと顎をくすぐられ、恍惚に鼓動が跳ねた。 「はあっ、まつぶささまっ……」 「ふふっ……。夢みたいに、お前のおちんちん、ぐちゃぐちゃにしてやろうか……?」 からかうというより、もはや期待さえ滲むいやらしい口ぶりに、ぷつりと箍を外された。 弄ぶ脚をつかまえて、足裏をくすぐる。途端に「やうっ」と身を引こうとするのを、足首を掴んで逃さずに、ぐっと膝を曲げて胸元に寄せる。 窪みをくすぐり続けながら、くちびるはつま先からすねへ、膝横を通って内ももへと、軌跡を残さぬ淡いくちづけで辿りゆき、足の付根まで上り詰めたところで、目を合わせたまま性器の付け根にキスをした。 「あっ、や、このっ……!」 「今度は私が、マツブサ様をぐちゃぐちゃに溶かして差し上げます」 「ホム、……っア!?」 頬の横でぷるりと揺れる、マツブサ様の根本に舌を這わせた。 「あっ! ふ、あぁっ……!」 唾液をたっぷりまとった舌で、ねろねろと竿全体をねぶり犯す。震える肌に煽られながら、根本を掴んで先端を口に含めば、途端に半身が仰け反って、甘美な嬌声が胸を打った。 いじらしく膨らんだそれを舐め蕩かしながら飲み込んでいく。根本までしゃぶり尽くして差し上げたいが、深く咥えては『恥ずかしくって死んじゃう』と、こちらが殺されそうな科白をいただいた前科があるので、すぼめた唇と喉で中ほどまで愛でながら、根本を指ですばやく抜き上げた。びくびくと爪先がソファを掻いて、内ももに顔を挟まれる。 「ほむ、っふ、ン、あ、ぁあっ……!」 優しく柔らかく、裏筋をくすぐり舐める。今にも極まりそうな声があがって、弱々しい手のひらに、くしゃりと髪を掴まれた。指先でかきまぜるように頭を撫でられて、ぞわぞわと肌が喜びに震える。 敏感に跳ねる生白い腹を堪能し、獰猛に貪り続けていると、互いの体液で口周りがべたついてきた。ご馳走にがっつく犬さながら、みっともないが――知るか、もう。 冷静さなど、とうの昔に欠いている。かわいい人のかわいいところを奉仕して、とびきりの痴態を堪能する、こんな至福が他にあろうか。 「あぁ、あっ、やめ、まえ、ばっかりっ……うぅ……!」 「……っ」 しゃぶり蕩かそうと上下する頭を、震える手のひらが押しとどめた。 突き入れる悦びよりも穿たれる享楽を望む、そんなお身体になったのは、ひとえに私の丹精込めた溺愛ゆえだ。 宥めるように前を愛撫するのにあわせて、奥まった秘部へと手を伸ばし、会陰に指を這わせる。くんっと押し上げ刺激すると、ひときわ大きく声が震えた。 「あっ、あぁっ、んぅ……ほ、むらぁっ」 「ン、あふうああ、っん」 「あううっ、くわえたまましゃべるなぁっ……! っア、ッぁああっ……!!」 赤毛を振り乱し悶絶するさまに煽られて、舌と手の奉仕を強める。搾り尽くすつもりで亀頭をじゅうと吸い上げると、マツブサ様の身体ががくがくと痙攣して、ぴんとつま先が伸ばされた。口内にほろ苦くも甘い愛が広がっていく。舌に絡めて、ぬるついた先端を労るように舐めていると、髪に埋まっていた手がはたりと落ちた。 ゆっくりと頭を引いてペニスを解放し、一滴も残さず味わい飲み下す。濡れた性器越しに見上げれば、はくはくと喘いで仰け反った顎の下、キスマークに侵されて火照った首筋が、汗ばんで艶めいていた。満ち足りた気分が、マツブサ様のすべてを渇望する欲に塗りつぶされていく。 貪婪な獣性は明かさず、鈴口にくちづけて、ちゅうと吸い上げた。 「んぅ、はぁっ、は……」 「たっぷり可愛がっていただいたお礼です」 「うぅ、く、なまいきな……」 時折ぴくんと肌が粟立つも、愛しい人は未だ荒い吐息をこぼして、たゆげに脱力していらっしゃる。気怠げな息遣いがにじんで、しずしずと脚が開いていく。濡れたまたぐらに誘い込まれて、奥の窄まりへ指を滑らせ、縁の皺ひとつひとつを慈しむようになぞって楽しむ。 ぎゅうと窄まったそこへ、人差し指がつぷりと飲み込まれていく。濡れるはずのないそこが、ぬかるみ、ほぐれて、熱く指を抱きとめた。 下腹を駆ける熱に唇をひと舐めし、欲深な視線で穿つ。こんなところにローションまで仕込んでおきながら、焦らしに焦らしてくれたご主人様は、両手で顔を覆って黙りこんでいる。表情は窺えずとも、耳まで茹だっているものだから、こちらまで頬が熱くなった。 「ご自身で馴らして……?」 「……待っていたと、っん、言ったろう。だから、ゆび、じゃなくて……」 細指の隙間で揺れる瞳が、あからさまに男をねだる。腕が伸びてきて、やわな指の腹が私の手首をなぞった。寄せられた眉根、愛くるしいおねだりに見舞われて、心が浮つきよろめきかける。 「は、いえ、十分にほぐしませんと」 「私は今すぐお前が欲しいのに……?」 「っ……、いけません、マツブサ様」 「ふふ、いじわるめ……。っあ! んう、そこっ……!」 どのお口が、ああもうかわいい、とこめかみに青筋を立て、突き入れた指先で腹側にある急所を押し潰せば、からかい笑んでいたくちびるから嬌声が溢れて、マツブサ様の全身がどろどろに熟れていく。 狭いそこに中指もつぷつぷと飲み込ませ、きつく食まれた二本指で円を描くように入り口をくじり続けていると、「あっ、ほむらぁっ……」と悦楽に溶けたかんばせの上から両手がそろりと立ち退いて、切ないくちびるが細指を咥えた。 うっとりと法悦にひたる瞳に見つめられ、腰が甘く痺れる。 「も、ゆび……、いいからっ……」 「マツブサさま……」 「ンぅ、はやくっ……きなさい、ほむら……」 「っぐ……!」 マツブサ様を慮って滾り勃つペニスを、婀娜めく逆手が扱き上げる。 おイタが過ぎる手のひらを掴んでぬめる先端を擦りつけてやれば、自分から手を出しておきながら、ビクンと跳ねた赤い頭がイヤイヤと振られて、襟足が頬をくすぐった。 腸壁を擦り上げながら、夢中で薄い胸にむしゃぶりつく。小さな突起を舐めると、無垢な肌が震えて、途端に高まった手に頭を抱え込まれた。乳首を掠めては羽のようになぞりあげ、もどかしいほど恭しく舌をそよがせながら、ぐちぐちと胎内を押し拡げてゆく。 「っ、ほむ、ほむら、ん、ふ、ぁ、あっ」 「はァッ……」 ゴム、は、ない。取りに行く隙も、余裕さえ、締め付けられた指先から吸い取られて、茹だる頭ではもはや屹立を突き入れることしか考えられなかった。 挿れたい、ぐじゅぐじゅに突き動かして、マツブサ様のすべてに溺れたい、…… ひたぶる心に燃えるおもてが、滑らかな両手に包まれた。鼻っ面を擦り付け唸る。耳の付け根をたどる指先、輪郭をあわく撫でる手のひら、こちらを見据えるご主人様の容赦無い眼差しに、理性の鎧が剥ぎ取られていく。 「おいで、ホムラ。ここで……っン、」 びしょびしょに濡れて蜜垂れる声が、こくり、と吐息をのんだ。 「めいっぱい甘やかしてやるから、ほら……っ」 きゅうっと菊座がすぼまって、指より太い愛をねだった。 ──熱に浮かされた頭が爆ぜる。 「はあっ、はっ、マツブサさまッ……!」 指を引き抜き、太ももを抱え上げる。親指でくぱ、と開かせた入り口に切っ先を宛てがえば、ひくつくそこにちゅうと甘く吸い付かれ、溺れる心地でぐっと腰を突き入れた。 「はっ、あう、っふ……~~ッぐぅ……!」 「う、……はッ……」 「っく、ン、んっ、あぁっ、ほむら……っ」 みちみちと拡がる後孔に太いところを飲み込ませ、背中に縋り付かれるのを感じながら、ゆっくりと身を沈めていく。狭くて柔くてぬるぬるで、溶けそうなほど熱くって、頭がおかしくなるほど気持ちいい。男を知らぬ顔をして、きゅんきゅんと淫乱に蠢くそこが、私を食いちぎらんばかりに咥え込んで奥へ奥へと誘っていく。 荒い息遣い、滴る汗、生々しく繋がった肉体の悦びに、無茶苦茶に腰を振りたい衝動に駆られるが、愛しい人の瞑った目尻に浮かんだ雫を指ですくって、大きく息をつき、中が馴染むのをじっと待つ。 くちびるに、頬に、くちづけを落とせば、マツブサ様はとろんと瞳を潤ませて、こくりと喉仏を上下させた。「ホムラ……」なんて喜色鮮やかな無上の愛をくちびるにのせて、私を包み込んでいるところ、白くなよやかな下腹を、愛おしげに撫でている。心臓が早鐘を打ち、マツブサ様を穿つ愛がますますかさを増していく。 私に縋り付く身体の強張りが解けてきたのを感じて、優しく前後に揺すり上げた。 「あっ……! く、ン、いい……ふ、」 「っは、ふわふわで、きもちい、です、マツブサ様っ……」 「ん、ん、う……っあ、あふっ、は、んっ、んぅ」 とん、とん、と穏やかなストロークで、けれど容赦なく前立腺のしこりを押し上げ内側をかき乱せば、苦悶にも似た表情で感じ入るくちびるから、甘い喘声が蕩けだした。かぶりついて直に吐息を貪りながら、ずりずりとペニスを引き抜いて、一息に奥まで突き入れる。華奢な身体が弓なりに反って、背に爪が立てられた。鋭く走る痛みにさえ掻き立てられて、自ら腰を押し当ててきたかわいい人に応えるように、獰猛に穿ち突き動かす。 「っ、う、ああっ、あっ、ほむっ、ア、……ぁああっ……!!」 双丘がほのかに赤味さし、湿った肌がひっついては引き離されて、肉を打つ卑猥な音が響き渡る。ずっとこの熱に甘やかしてほしくって、今にも果ててしまいそうなのを我慢しているさなか、マツブサ様がびくびくと痙攣して、後孔が熱烈に締まった。射精せず絶頂に達したらしい。何度も強く絞られて、歯を食いしばって耐える。獣のような声を上げ、密着したままぐりぐりと腰を回し犯していると、首元にビリリと刺激が走った。──噛まれた。マツブサ様の、小さなお口に。 法悦の息をついたのと、腰を突き上げたのと、どちらが先だったろうか。 硬く張り詰めたもので奥まで抉って、甲高い嬌声をあげた身体を強く抱きしめる。ぐうっと締め付けられて、身も心もマツブサ様の深いところに愛される。けれど今目指すべきは最奥ではない。 「っ、あ、あ、ン、ほむら、ぁっ」 「はっ……ふ、マツブサ様……」 縁ぎりぎりまでペニスを引き抜く。逃すまいと収縮した後孔に強く亀頭を締め付けられて、ぐりぐりと窄まりの奥へ身を沈めては引き返し、浅いところばかりねちっこく擦りつければ、くちびるを噛んだ涙目に睨めつけられて、ふっと微笑がこぼれた。前立腺の膨らみにカリを引っ掛けるようにグラインドし、思い切りそこばかり攻め立てる。 「あっ、あ、あぁっ……! うあっ、や、ア、あぁっ」 「っふ、マツブサ様の大好きなところ、たくさん愛して差し上げますねっ……」 「あ、あ、ひっう、や、だめ、もっ、またいく、ぁ、いっちゃ、~~ッアああ……!」 「は、一緒に、く、マツブサ様っ……」 絶頂を予感し、ペニスを引き抜こうとした瞬間。──長い両足が、がしりと私の胴に絡みついた。 喰われる、そう直感が囁いて、歓びに心が躍る。マツブサ様が、至極楽しそうに喉を鳴らして、果てる寸前の獲物を引き寄せた。 「っあ、マツブサ様っ、もっ……でる、でます、から、」 「ん、はぁっ、いいぞ、出しなさいっ……」 射精寸前の剛直がびくびくと脈打った。散り散りの理性をかき集めて腰を引こうとして、まとわりつく四肢に引き戻されてぐちゅりと最奥へ分け入った。マツブサ様の艶めかしい息遣いに耳を犯され、幸福に気が遠くなる。愛しい身体を掻き抱いて、根本までむしゃぶりついて離さない胎内のいっとう深いところまで、本能のまま穿ちねじ込んだ。 絡みつく襞が激しく収縮し、ぎゅうっとひときわ情熱的に搾り取られる。 「あっ、は、ほむらぁっ……ア、っぁは、ぁああッ……~~~~っ!」 「ぐっ……う、まつぶささまぁっ……」 肩口に顔を埋めて歯を食いしばる。強すぎる快感に視界が明滅し、びゅくびゅくと迸る精液がマツブサ様の中に注ぎ込まれる。ひとつになるほど縋り付かれて、多幸感に頭が真っ白になって、……また、首筋に、噛みつかれている、そう気がついた時には、ずぶずぶに受け入れてくれる身体に溺れきって、ふたり全身で息をしていた。 無意識に、最後の一滴まで出し切るように、ぐちゅ、と揺すりかき混ぜる。「んうっ……」と艶めく嬌声に素肌をなぶられ、ハ、と我に返ってペニスを引き抜いた。それにすら感じ入る美声があがり、醒めゆくはずの心がぐちゃぐちゃにかき乱される。くてんと脱力したお身体は、未だ私を大事に抱きしめて離さない。 「はぁっ……はっ……、ン、いっぱい出せたな……」 「中に、申し訳ありません、早くシャワーを……」 「いい。さっき口に貰えなかった分だ。っん、……それより、」 「まだ出せるな……?」なんて首を傾げられ、止まりかけた心臓の上を、淫靡な手のひらがうっそりと撫で上げた。途端、尽きぬ期待に鼓動がはずんで、みるみるうちに気合がみなぎっていく。 このままもう一回、なんて唆されでもしたら、きっともう抗えない。それどころか、一回で止まれる自信もなかった。 ぐるぐると犬のように唸って応える。痩躯を姫抱きにして、丸め込まれる前にシャワーブースへずんずん突き進む。おとなしく抱え上げられたマツブサ様は、ゆさゆさと揺れる振動に愉快そうにおとがいを解いて、両腕を私の首にまわして胸元に擦り寄り懐いている。密着する素肌どころか、裸足に刺さるマットの毛先までもが妙に神経を刺激して、下半身が苛立って仕方がない。 中出しなど失態もいいところだ。これ以上の無体は働くまいと気を引き締めて、腕の中のマツブサ様を抱き直しながら「煽るのはおやめください」と低く唸った。すると、よしよしわしゃわしゃと愛情に満ちた手のひらに頭を撫で乱されて、そのうえ、嬉しそうにほころんだあどけないくちびるに、ちうと頬を吸われてしまった。 …………ので、完膚なきまでに陥落した。 結果、シャワールームにもつれ込んだあと、精液を掻き出すだなんだと再び繋がって、ベッドに戻ってお身体が冷えてはいけないからと温もりを分かち合い、更には、ぐでんぐでんに蕩けて力の入らぬありさまで私に乗りたがるマツブサ様を下からあやして、二人して笑いが止まらぬ程ぐだついた騎乗位を満喫し、それから、……言うには及ぶまい。 愛する主君と過ごす夜は酩酊とともに深まって、可愛がって可愛がられて、甘やかし甘やかされて戯れて、燃え尽きることなきほむらのように情熱的なものである。 畳む ※後朝は蛇足だったため消しました。 一部の聡いしたっぱたちにはバレバレで、ツートップが仲睦まじくておめでたい!と祝福されています。 favorite いいね THANK YOU!! THANK YOU!! とっても励みになります! back 2025.10.6(Mon)
果てなき闇の中、いさり火のごとく雄を惹き寄せるものが立っている。
裸の肩にショールを引っ掛けただけの淫蕩な有り様で、恵まれた肢体を幽艶に見せつけるその人は、おすわりをさせた私に「ご褒美だ」と蕩けるように囁いた。
玉の白脚が、すらりと眼前に伸ばされる。顎を持ち上げた爪先が、首筋を、鎖骨の間を、激しく鼓動する心臓の上を、劣情の炎でくすぐるように伝い降りていき、お預けの間にすっかり固く猛った私の欲の塊へ、しっとりと密に吸い付いた。
柔らかい五つ指と穢れなき足裏が、男根を擦りつけ、しごきあげては、はしたない先走りを纏ってぬらぬらとその珠肌を光らせている……。
「……という夢を見まして」
白みゆく空、上がりきらぬ己の瞼、目前におわすは愛してやまぬ東雲。
「ど、どうしてそれを私に報告するのだ……」
「正直は美徳ですので……」
「そ、そうか……」
ぱちぱちと瞬く合間も露と消えぬ麗人は、途方に暮れたような表情で、手にしていた書類を現在進行形で床にぶちまけている。拾い集めてお手元にお返しする際に、さり気なく手袋を外して包み込むように撫で申し上げ、滑らかな手の甲を堪能させていただいた。
「夢の中の貴方も麗しゅうございましたが、現のマツブサ様は夢も理想も遥かに超えて、世界を照らすただひとつの光であらせられると、今改めて実感しております」
「お前さては寝不足だな?」
「その凛乎たるお姿と貞淑な佇まいが、一介の部下たらんとする私に却って身を焦がすほどのエロティシズムを想起させ」
「いいから早く出発しなさい」
「はい」
なんて仲睦まじく見つめ合い、そわそわと襟足を撫でるばかりで身の入らぬ様子の主君に後ろ髪を引かれつつ、出立したのが今朝の出来事。
お天道様座すえんとつ山のてっぺんで、目的の隕石はマグマに沈み、ものの見事に任務失敗。
業務過多による睡眠不足と欲求不満が祟ったなどと、口が裂けても言えるはずがない。己の怠慢に内心しおれて帰路につくと、生涯を賭してお仕えする主君であり、私の帰る場所であるマツブサ様は、帰還した我々をにこりともせず出迎えた。
今朝は優しく輝いて見えた鮮やかな赤髪も、今ばかりは目に痛い。
「ボルケーノシステムを滅失。挙句、隕石も手に入れられず」
「はっ……。申し訳ありません」
「お前がついていながら、ソライシなどに遅れをとったのか」
「申し開きのしようもございません」
「ふん……」
かつ、かつ、かつん。
丁寧に整えられた爪先が、磨きぬかれたオークのデスクを弾いている。真っ向から睨めつけられて微動だにしない私の隣、青褪めた部下が、びくりと身体を震わせた。
日頃のにこやかさはどこへやら、主君は冷ややかな面差しで沈黙し、我らに発言権はない。広々とした執務室に、不機嫌なリズムだけが響きわたる。
かつん、かつん、……かつん。
どこまでも重苦しい音が止んだ。静寂が我々を囲みこむ。苛烈な眼差しは、かわらず私を射抜いている。
自惚れではなく、私はマツブサ様からいっとうのご寵愛を受けているという自負がある。だからこそ、対峙する部下を萎縮させるように黙りこむ姿がらしくなく、申し訳なさよりもその様子が気がかりで息が詰まった。
張り詰めた空気を隔てる展望窓の向こう側では、キャモメの群れがのんきに晴天を泳ぎ回っている。燦々と降り注ぐ陽に照らされて輝く主君の色なき眼差しが、私を逃して隣の部下へぎろりと向いた。
麗しい唇が薄く開いて、沈黙に終止符を打った。
「君はもう下がっていい。ホムラは残れ。話がある」
「はっ」
ひ、と部下が息を呑んだ。はいと応えようとして、惨めにも失敗したようだった。
隊長に責任を負わせて退出してよいのだろうか、なんて憂慮の見えるおどおどとした素振りで、部下がマツブサ様に背を向ける。その丸まった背中に、怜悧な声がざくりと刺さった。
「朝までこの部屋に誰も近づけるな」
か細く上がる短い返答。地獄の仕置きでも思い浮かべたのだろう。ひどく狼狽した部下は、私の身を案じるような目配せを最後に、もつれる足取りで去っていった。
礼を失した音を立て、重厚な扉が閉まる。そうして、二人だけが密室に残された。
──当の私はといえば、声を上げて笑いだしてしまいそうだった。
夜がな夜っぴてマツブサ様とご一緒できるだと! 罰どころかとんだ恩賞だ。心の弾む音がする。お前の上司に待ち受けるのは極楽の褒美だと、哀れな脱兎に大声で教えてやりたいほどに。
マツブサ様が腰を上げた。すらりとした長身がデスクを回りこみ、後ろ手に仁王立つ私の方へゆっくりと歩を詰める。赤髪がしゃらりと揺れて、小首を傾げた厳めしい双眸が至近距離から覗き込んできた。
「……さてホムラ。どう埋め合わせをしてもらおうか」
「はっ。どんな罰も甘んじて受ける所存です」
「ふ。今にも庭を駆け回りそうな顔をして、罰を受けるもなにもあるまい!」
自慢のポーカーフェイスも、この方の前では型なしだ。顎を下げずに見つめる先で、口をへの字に結んでいた主君が破顔した。途端に周囲がぱっと明るく華やいでいく。
どうやらご機嫌をなおしてくださったようだ。
知らず安堵の息をつく私の周りを、後ろ手を真似して茶目っ気いっぱいのおみ足の、ポチエナのように弾む足取りがくるくるまわる。どんな心境の変化かはわからぬが、打って変わって喜ばしそうなお姿にハテナが浮かぶも、その様子がお可愛らしかったので、見惚れて思考を放棄した。
「玩具を壊して尾を振る雄犬には、きつく灸をすえてやらないとな」
「はっ……」
沙汰を待つ私の顎を、指先がついとなぞって離れていった。ときめきもあらわに視線で追うと、洒脱な長衣を翻してくるりと一回転、踵をそろえてこちらに向き直ったマツブサ様が、まばゆい笑顔で両腕を広げて私を招いた。破壊光線顔負けの、凄まじい威力がこの身を襲う。
ちかちかと目を眩ませながらお招きに応じようと足を踏み出すと、辻斬りのごとき勢いでマツブサ様の方から飛び込んできて、ぎゅうっと抱きしめられた。清らかな香りが鼻孔を満たす。震え慄き、無上の愛くるしい存在を捕らえようと両手を回すも、一足遅く華麗にひらりと逃げられた。
そうして、わずか数秒の犯行で男を煽りに煽った通り魔様は、応接ソファにぴょんと腰を落ち着けた。お尻からソファに飛び込むなんて真似、お行儀が悪くて、一生の思い出に残るくらい、とんでもなく愛らしかった。
若者の動揺などなんのその、マツブサ様は優雅に脚を組み、口元に指を添えて私を呼んだ。
「座りなさい。ほら、ここ」
マツブサ様が座る横、優に二人分は空いたそこを、ぽんぽんと白い手が叩く。遠慮がちに隙間をあけて腰を掛けると、ぐいと身が寄せられて、太ももの側面……どころか、二の腕に至るまで密着してしまった。次いで、華奢ながらも貧相とは程遠い身体がしなだれかかってくるものだから、腰に手を回して抱き寄せれば、高鳴る胸板にそっといたずらな手のひらが置かれた。
視線を上げると、マツブサ様のかんばせが、くちづけをねだるような近さにあった。慈愛に満ちた眼差しが、吐息さえ混ざる距離からこちらを見つめている。波打つ鼓動を確かめるように、滑らかな熱が私の胸を撫であげる。
「灸をすえるなど冗談だ。今回は、ボルケーノシステムが実用に足るということがわかっただけで十分だからな。そんなことより、お前がソライシごときに土をつけられたことの方が心配なのだよ」
「寛大なお心遣い痛み入ります。……ですが、あの、マツブサ様……先程まで怒っていらっしゃいました、よね?」
「ん……」
睫毛が伏せられて、気品に満ちた唇がつんと尖った。拗ねた口ぶりが、羞恥をのせてぽつりと落ちる。
「ホムラが急にエッチな話をするから、期待に応えようと思って待っていたのに……、お前ときたらそんなことも忘れて、しょんぼりした顔で帰ってくるものだから」
「ま、マツブサ様……!!」
「まあ、かわいいお前を見ていたら、怒りなど吹き飛んでしまったが」
私の呼吸にあわせて上下する団のシンボルマークの上で、シミひとつない手のひらが、欲に濡れた手つきで薄布越しの胸筋を味わっている。どぎまぎと身を固くしていると、タンクトップの裾をつまんでできた隙間から白い指がすいと侵入し、直に腹筋をなぞられた。ごくりと喉が鳴る。
粟立つ素肌の上を歩く手のひらが、裸の胸に吸い付いた。勿体ぶった手つきで、柔らかく揉まれる。色鮮やかな欲望が、ぱちぱちと視界で爆ぜた。
「仕切り直しだ」そう言って、マツブサ様が唇すれすれのところにちゅうとキスをする。
舞い上がって奥ゆかしい唇を迎えに行くと、私の舌を甘ったるく吸って瞼を閉じたその人の指先が、優しく乳首をつまみ上げた。慣れない刺激がなんとも面映ゆく、こそばゆさに上体が揺れる。
報いるように、マツブサ様の大好きな上顎を可愛がろうと口づけを深めると、頭を振って逃げられた。一方で、私の乳首は相変わらず摘まれている。
気持よくしようとしてくださっているのはわかるが、焦れったさが頭をもたげた。
「あの、申し訳ないのですが、そこはあまり……」
「えっ、そうなのか? こうされたら、私はすごく気持ちいいのだが……」
「………………」
勝手知ったる可愛い小粒を、服の上からつまみあげる。
「あっ! こらっ、やめなさい」
「不可抗力です」
ぺちんとはたかれ一時撤退する。すぐさまリベンジしようと両手を差し向けると、照れくさそうに身を捩る主君から「がっつくな。私からしてあげるから、ちょっとだけ我慢だ」なんて絶大な効力を持つ意地悪をいただいた。
「マツブサ様……」
「ここ最近働き詰めだったから、疲れているだろう。労ってやる」
言うなりこちらに向き直ったマツブサ様が、ずりずりと膝で移動して私の上に乗り上げてきた。柔らかなお尻が腿に座る。躊躇いつつ柳腰に手を添えると、ほんのり色づいたお顔がこちらを見つめながら、見せつけるように大きく開脚した。蠱惑的な振る舞いに唾を飲む。
胸板を離れた手のひらが、臍周りをなぞりながら下がっていって、身を震わせた私のベルトに指をかけて静止した。
「お前はいつも私に奉仕しすぎなのだ。たまにはすべてを委ねてみなさい」
「はっ、しかし……」
「いい、日頃のお返しだ。前後不覚になるまで甘やかしてやろうじゃないか」
カチャカチャと音を立てて、不慣れな手つきが金具を外す。うきうきワクワク、心から楽しそうなご様子で、私のボトムに手をかけている。
引きぬかれたベルトがフロアマットに落ちていくさまを夢見心地で眺めていたが、はしゃぐ指先がファスナーを下げようとしたところで、我に返った。手首を握って待ったをかける。
「ま、まだシャワーを浴びておりません」
「うん? それがなにか」
「一度その、身体を流してきても……」
ぐるり、握った細い手が裏返って、私の手首を生温かい熱が包みこんだ。
「構わん。このままいいようにされたまえ」
「い、いけません……」
「そんなに物欲しそうな顔をされては、こちらだって我慢がきかないよ。私に待てと言うのか? なあ、ホムラ……」
幼子をあやすように、柔らかく額へ口付けられた。続いて、軽いリップ音とともに、頬に愛らしい口付けが。悪魔のように艶治な指で男の顎を上向かせ、屈みこんでこちらを伺う可愛い人は、私の唇をやわく食んで「キスしなさい」と囁いた。
これほど凶悪に誤魔化されては抗えず、分厚い舌で上品なそこをこじ開けて、敏感な粘膜を丁寧に愛撫する。くふくふと嬌声を漏らして身をくねらせるマツブサ様の指が、とん、とん、と私の手の内を歩いていって、しまいに指の付け根をこしょこしょとくすぐって、再びボトムに手をかけた。
口腔を味わっていた舌先を焦らすように甘く噛まれて、魅惑のくちびるが離れていく。
「マツ、」言いかけて、耳に熱い吐息を吹き込まれた。ぞくぞくと震えた私の首筋に、愛らしい白い歯がかじりつく。そして、熱に疼く身体の中心、はっきりと兆したそこを服の上からさすり上げられて、下肢が震えた。
「う、ぐ」
「ほら。ここは触ってもらえて嬉しそうだぞ」
口端を上げて勝ち誇る、その上気した頬が、期待に濡れた眼差しが、私を興奮の淵に追い立てる。ぐっと握りこまれると同時に、首筋をなぞりあげた唇に耳を食まれた。
「は、あっ」
「ふふ。お前は耳が弱い」
ジジ、とかすかな金属音が聞こえた。大きく前をくつろげられる。みっともなく下着を押し上げる熱を見つめて、マツブサ様がはあと火照った溜息をついた。
たおやかな指が、膨れ上がったそこを弄ぶ。こしょこしょ、つんつん、さわさわと、布地にシミの浮くほど脈打つ分身をしばらくそうして遊ばれて、唐突に、ぐいと下着を下ろされた。滾った逸物がぶるんと飛び出す。あらわになった私の怒張が、品なく天を向いている。
目元を赤くしたマツブサ様が、うっとりと喉を鳴らした。高貴な指が、逆手にゆっくりと灼熱を撫で上げて、カリのくびれをかしかしとくすぐった。
一方的に暴かれる感覚にたまらず細腰を強く掴んでしまい、マツブサ様の「あっ、ン……」と感じ入った吐息が私の耳を悦ばせた。
「だーめ。労うと言っただろう? じっとしていなさい、ステイ」
「ふ、う、……っは、い……」
「いい子だ。お前に触られたら、なんにも考えられなくなってしまうからな……」
待てを命じられた忠犬は、ただじっと期待して、ペニスの先から涎を垂らすことしかできない。
ご主人様は、肉欲の塊をいやらしく撫で回し、ぷくりと滴る先走りを人差し指に塗りつけて、鈴口をにちにちといじめながら、典雅に笑んでくちびるを一舐めした。
「手で、と思っていたのだが……ホムラ、舐めてもいい?」
「お、お口でそんなっ……、していただけるんですか」
「いいぞ。たくさんぺろぺろしてやろう」
「シャワーを浴び」
「しつこい。私は今すぐしたい」
「ゴムを」
「生がいい。ホムラの味が知りたい」
「んぐぅ……」
己の口をバシッと手で塞ぐ。ときめきでのぼせて死にそうだ。
ギンギンに主張するそれをすべすべの手でしごきながら、マツブサ様がゆるりと腰を引いた。小鳥がついばむような口づけをひとつ、腿に乗っていた熱がひいて、魅惑の体躯が足元に下がっていく。私の太ももに手をかけたマツブサ様が、足の間にぺたんと座り込んだ。
肉棒に手を添え頬寄せて、仔エネコのごとく愛嬌たっぷりに笑うマツブサ様……暴力的なまでに素晴らしい光景だ。……が。
「お、御身が跪くなど……!!」
「ひどいホムラ。私のすることが不服だなんて……」
「すみません大歓迎です」
「だろうな。正直でよろしい」
やられた。もとより逆らえるはずもないが、私はマツブサ様の望むまま咲き乱れる、盛りのついた雄犬だ……。両手で顔を覆うも、指の狭間から見えるマツブサ様は極上の笑顔でグロテスクなそれにキスをして、私を慰め昂ぶらせていく。
やにわに、指でぴんとペニスを弾かれた。楚々としたくちびるが、筋の浮く竿を横からかぷりと食んだ。
「っ、マツブサさま……」
「おっきくって、咥えられそうにないな……。ふふ、顎が外れてしまいそうだ」
「はぁっ……、かわいい、お可愛らしいです、マツブサ様」
「かわいいのはお前の方だ。ここをこんなに膨らませて」
マツブサ様が、うっとりと男性器に頬を擦り寄せた。唾液をまとった舌先が、私の卑しい末端をぺろりと味見する。
そして、男根を握りしめ、伏目がちに恥じらうお顔が、ちうと先端にキスをした。喉奥から獣のような唸り声が出る。何度もくちづけを落とされて、透明な粘液が桜色の唇との間に糸をひいた。先走りを絡めとるように舌でぺろぺろと舐められて、ますます粘ついた欲望がとろけ出していく。
てらりと光る唇が花開いて、貞淑にも淫猥にも満ちたそこが先っぽを咥えた。快感が背筋を走る。濡れそぼった口腔が先端を包み込むも、優艶で慎ましいお口ではひと息に飲み込めないようで、ゆっくりと亀頭がぬかるんだそこに覆われていく。マツブサ様の頬がぽこりと膨らんで、ぎらつく目線が釘付けになる。
「マツブサ様ッ……! っはァ……」
「んく」
麗しの細面が、男を咥え込んだまま、ころころとお笑いになっている。その可憐な振動がダイレクトにペニスを刺激するものだから、歯を食いしばって快感を受け流した。
心休まる暇もなく、膨張したそこをちゅぷちゅぷと食まれたかと思うと、ちゅうとすぼまって熱く吸われる。息を詰めたところで、根本を押さえていた両手の指が裏筋をこすりあげ、舌先がぬるぬると割れ目をなぞって往復した。
「うっ……、き、もちい、です……、っは……」
私の喘ぎ声を受けて、愛しい瞳が嬉しそうに細められた。少しずつ喉奥に咥え入れられて、溜まった唾液を飲み込んだ喉に亀頭が絞られ、腰が跳ねそうなのを必死に抑える。喉奥を突き上げるなど以ての外だ。快楽の奔流が、全身を駆け巡っている。
鼻息荒く、無沙汰な手で乱れた赤髪を耳にかけ、頭を撫でて差し上げる。得意げな上目遣いと目があった。欲望がずしりと質量を増す。
マツブサ様が頭をひいて、熱く熟れた口腔からペニスがまろびでた。ひやりとした空気が触れて、けれどすぐに、弧を描いたくちびるが根本に吸い付いた。やわく蠢く舌とともに、下の方から幹をはむはむと伝いのぼっていく。
凄艶極まる可愛い人は、「かわいいな……」と蕩ける吐息で肉竿を撫で、かぱりと開いた赤い口で、亀頭を飲み込んだ。
「っう、あ!」
みっともない声が出た。しとどに絡みつく舌が、淫らにうごめく肉壁が、固く張り詰めた肉棒にむしゃぶりついて、奥へ奥へと咥え込んでいく。微かに苦しげな表情で、時にずろりとこうべを引いて、ぐうっと深く顔を埋めて上下する、そのたどたどしく懸命にご奉仕くださるお姿が、狂おしいほど胸を打つ。
「ふっ、はァ、ま、つぶさ、さまっ……」
「ん、ぐ、……っむ、」
くちゅくちゅ、ぬぽぬぽと、上品なくちびるが奏でる品のない音に血肉が滾る。
太ももの横で握りしめた私の拳に、竿をいじめていた手のひらがぺたりと覆いかぶさった。指を絡ませる。繋いだ手が愛に汗ばみ、ぎゅうと吸いついて一つになる。
耳まで真っ赤に染めて涙を滲ませた上目遣いが、ゆっくりとこちらを仰ぎ見た。
「う、ぐ、ま、マツブサさま、もうっ……、ッ……!」
「んぅ……」
悦楽にとろんと蕩けた微笑みが、私を絶頂に導いた。
果てる寸前、繋いだ手をほどき、華奢な両肩を掴んで引き離した。ちゅぽんと音を立てて解放された先端から白濁が迸り、咄嗟に目を瞑ったマツブサ様のお顔に降りかかる。
ばくばくと心音が鳴り響く。眼前に広がる絶景に、ごくりと喉が鳴った。
マツブサ様の火照り顔が、私の精液に濡れている……。
うぶな瞼がそろそろと開いて、数度瞬いてから、握りなおしたペニスの先を尖ったくちびるがつんとつついた。くすぐったさと愛おしさが、後ろめたさを凌駕する。
「ま、まつぶささま、申し訳ありません……。目に入っていませんか?」
ポケットから出したハンカチで頬を拭く傍ら、マツブサ様の指が、塗り広げるような動きで口元を拭う。蜂蜜でも嗜むように、白濁を可憐なお口が舐めとった。
「大丈夫だ。少し驚いただけで、ん……」
「ああっ、お舐めになってはいけません」
「お前はいつも飲んでいるではないか」
「私はよいのです。マツブサ様のものは一滴残らずいただきたいので」
「ホムラばかりずるいぞ。もう一回だ。今度はちゃんと私の中に出しなさい」
私の中……。マツブサ様の手の内で、素直な愚息がグンと反応した。
先程まであんなにいやらしくしゃぶっていた人が、わ、と小声で驚いて、恥ずかしそうに眉尻を下げた。それなのに好奇心いっぱいな手つきで揉まれて、男の象徴が再び硬度を取り戻していく。
おまけに上目遣いで玉をぺろんと舐められて、んぐうと唸った男心を知ってか知らずか、仕草ひとつとっても悪質な主君は「ホムラのエッチ……。本当に私のことが大好きなのだな」などと言い放ち、頬を染めてはにかんでいる。
「はっ、大好きですマツブサさま」
「私も好き。だが、奥までは咥えられなかったな。すまない」
「いえ、天にも昇る心地でしたので、お気になさらず……」
「そう? じゃあ次は本当に天に昇らせてあげようか。ふふ」
口を引き結んで愛を飲み下す。
男の情動をよそに、ふわついた小さな舌が、ガチガチに復活した剛直の先を舐めだした。ご褒美に息を乱しつつ、美味しそうにしゃぶっていらっしゃるこのお顔、見覚えがあるような……と首をひねって思い出した。大好物のアイスクリームを握りしめ、幼子のように夢中で味わっていらっしゃった時の、あの幸せそうな表情だ。
気づいた瞬間、体中がのぼせ上がった。
「マツブサさまっ……」
「いつも私ばかり気持ちよくしてもらっているからな。今日はお前が満足するまで、好きなだけいじめてやろう」
「っく、光栄、です……」
愛する人の繰り出す言葉が、急所を抉って突き刺さる。これ以上興奮させられてはたまらないと、獣めく両目で睨めつけたところで。
「……なんてな。本当は、私がたくさんしてみたいのだ。さっきも舐めていただけで、気持ちよくなってしまって……。はしたないが、ホムラとこうするのを、朝からずっと楽しみにしていたから」
えへへとはにかみながら、容赦無い追撃。
すんでのところでこらえていた理性が、あっけなく消し飛んだ。
「マツブサさま」
「なんだ?」
「お覚悟ください」
「えっ?」
ソファの背もたれを倒し、ベッドへ様変わりしたそこへ魅惑の痩躯を引っ張りあげて、俊敏かつ丁重に押し倒した。
のしかかった己の腕の中、まんまるに見開かれたお目目が私を見上げて瞬くが、お咎めをいただく前にとっておきの愛でくちびるを塞いだ。
「んむ、っふ、ンン……!」
薄い唇をくにくにと食み、火照った吐息ごとねぶって味わう。ふわりと開いたくちびるのあわいに侵入を果たして、さきほど可愛がることの許されなかった上顎をねっとりと蹂躙する。力を抜いた舌先でくすぐるように愛撫して、合間に可愛い舌をすくいあげては踊るように絡ませ合って、キスが大好きなマツブサ様の心も身体も満たして差し上げる。
口内を可愛がれば可愛がるほどとろとろに開花されていくマツブサ様は、恍惚とした表情で舌を震わせて顎を上げ、私に犯されるのを求めるように動きを追っていらっしゃる。
くっと口端が上がるのを自覚した。私の愛するご主人様は、ことさら快楽に弱くどこまでも私に甘い……。
「んっ、んぅ、……」
鼻にかかった嬌声が私を呼ばう。わずかに腕の動く気配を感じて、両手の指を絡めてソファに縫い止めた。両腿を膝で挟み込む。鍛えぬいた躰の檻に閉じ込めたって、雁字搦めに囚われているのは己の方だ。みだりがわしい水音に犯され、呼吸の追いつかぬほど昂ぶっているご様子に、唇を解いて幾つものくちづけを降らせる。白雪のごとき肌、紅潮した頬、透明な雫をたっぷりと湛えた目尻に、万感の想いを込めて。
服の上から胸の先端をひっかく。生白い顎がびくんと上向いた。垂涎の首筋へかぶりつき、手慣れた手つきで服の釦を外していく。
何回何十回とこの身を許された私にかかれば、輝く素肌にお目通り叶うまでものの数秒もかからない、が。
「待て」
「……ッ! う、」
頭で理解するより早く、反射で身体が固まった。
瞠目した先で、か弱く喉元を晒すばかりに見えた獲物が、燃え盛る眼でこちらを見ていた。先ほどまで確かに翻弄されていたはずだ、それなのに。
肩で息をするマツブサ様がわずかに頭を持ち上げて、こつりと額が合わさった。くろいまなざしがニタリと笑んで私を穿つ。
「自分で脱ぐ。私のストリップなんて貴重だろう? じっくり鑑賞するといい」
「ま、マツブサ様……」
「脱ぎ終わるまで、そのおっきなもので遊んでいなさい」
「っは……う、」
呆然と静止するなか、繋がったままの右手が己の男根へと導かれていく。絡んだ指がひとたび離れて、手の甲を覆われたかと思うと、自らの逸物を握らされた。それから、年端もいかぬ男児に自慰を教えるかのような手つきで、こし、こし、と優しく揺すられて、とうに膨れ上がったそこがびくびくと脈打った。
「ほら、ごしごし……ゆっくり、ゆーっくり、出しちゃダメだぞ。ふふ」
劣情が口から滴り落ちそうだ。みっともなく鼻息を荒くする私を見て、喜悦に瞳を細めたマツブサ様が、ぐいと上着の合わせを開いた。胸の先までほのかに上気した抜けるような白肌がこぼれだし、横っ面を張られたような衝撃に戦慄いた。
まさか、素肌に直接羽織っていらっしゃるなんて……。
ごくりと喉が鳴る。つんと主張する胸の頂きを逆上せた頭で見つめながら、激しく手の内の自身を抜き上げた。
マツブサ様は焦れったく身を捩りながら、もたもたと袖から片腕を引き抜いている。とてもストリップなどと呼べる有様ではなく、むしろそんな下品なものより男の心を穿って離さぬお仕草に、握りこんだ剛直の先からますます歓喜の雫が滲みだした。
しばらくそうして、薄い腹やくびれた腰をねじって仰け反り、奮闘の末ようやく上半身だけ裸になったマツブサ様が、にこ、と照れくさそうに微笑んだ。
己を組み敷きペニスをしごく男に向かって、上手に脱げたぞ、さあ褒めなさいみたいなお顔で。
「ぅく、は、マツブサさま、まつぶささまっ……」
「偉いぞホムラ。もう少しだけ我慢できるな? うんと気持よくしてやるから……」
「っは、う、うぅ」
倒錯的な状況が言葉を奪う。
触れたい、舐めたい、味わいたい、唇で辿って吸い上げて、指先でなぞって蹂躙して、余すところなく堪能させていただきたい。それなのに、手を出してはならぬ、欲を解放させてもならぬと、極まらない程度に竿を扱き上げることしかできず、鈴口から耐え忍ぶ涙がつうっと落ちる。
それがマツブサ様の下衣を汚してしまうと思い至らぬほど、お預けをくらった頭は茹だって靄がかり、顎先を伝い落ちた汗までもがぽたりとマツブサ様の口端を叩くも、あ、と瞬く間に、淫猥な舌がぺろりと私の体液を舐めとった。
「辛そうだな……。健気で可愛い犬には褒美をやろう」
「あ、ま、お待ちくださ、ッう、はァ……ッ!」
優しさを装った凶悪な指先が、カリをこしょこしょとつまんで遊びだした。そのまま手のひらで亀頭を覆われ、粘液で滑る熱い肉にねちねちとこね回される。あらん限りのプライドで抑えこまなければ、今にも爆発してしまいそうだった。
「ア、はっ、マツ、くぅっ……!!」
「ふっ、は……そう、待てだ。いい子いい子……」
血管が切れそうだ。ぐらぐらと男を煮え滾らせるマツブサ様のもう一方の手が、そっとご自身の胸元に寄っていく。未だ下肢の脱衣にとりかかる気配すら見せず、これでもかと私を地獄の責めで苛んでおきながら、乳首へとたどり着いた指先が、魅惑のそれを引っ掻いてはくにゅりと摘んで、最高のひとり遊びをはじめてしまった。
「ん、あっ、ホムラ、ほむらっ……あっ、ンぅ……」
「~~~~ッツブサ様ぁ……!!」
ぴんと尖った乳首が、くにくにと押し潰されて形を変える。
お預けをくらわせた犬と見つめ合い、貞淑を形にしたような指で桜色に染まる乳首をいじって、嬌声を溢れさせては善がる淫乱な飼い主さまは、蕩ける笑みでくちびるを舐めて湿らせた。
「はぁっ……出したいか、ほむら……? ン、ふふ……かわいそうに……」
憐憫を口にした美貌が、艶やかに濡れた眦にシワを寄せた。
くちびるを極上の愉悦に歪めて、心の底から楽しくてしかたがないという風に。
激しく震えた左腕が自重に屈して、マツブサ様の上にどさりと倒れ重なった。きゃうんと子犬のような息遣いののち、下敷きになった主人が耳元で可憐に笑う。
両腕に背中を掻き抱かれ、首筋に熱く吸い付かれた。
「はっ、はーっ、ウッ……! まつぶささまぁっ……!!」
果てなき快感が迸り、勢いよく体外へと溢れ出た。
ばくばくと暴れる鼓動が、密着した主人の胸を叩く。愛しい身体に覆いかぶさったまま、ぜえぜえと全身で息をする。
余韻を噛んで、白い項に鼻先をくっつけて思いきり吸い込んだ。清楚で芳醇な、男を包み込むマツブサ様の芳香に、心も肺も満たされていく。
大きな飼い犬にじゃれつかれたご主人様は、可笑しそうに、愛おしそうに、耳元で「待てを破ったな……悪い子だ」なんて囁いて、優雅にくすくすと笑っている。
ひときわ愛のこもった強さで抱きしめられて、たまらず火照った痩躯に縋り付いてくちびるを貪った。
「んちゅ、う、……んく」
熱い手のひらが背を滑り、か弱くも必死さの滲む力で、タンクトップを握って引き寄せた。望まれるまま身を寄せあって、絡みついてきた舌を吸い上げ歓迎し、好きなだけ口内を貪りあう。私の手管を真似ているのか、たどたどしく歯茎をなぞる舌先が愛おしい。下腹を快感の炎が舐める。
マツブサ様のなだらかな胸板が大きく上下するのを感じて、優しく舌の根をすくい、惜しみながらくちびるを解いた。
真っ赤に熟れた口腔、とろける吐息、熱に浮くまなざし、あられもない痴態に、体の芯まで熱に侵される。
耳元から首筋にかけてちうちうと執着の痕をつけながら、しっとりと汗ばむ胸を両手で揉むと、マツブサ様がくすぐったそうに身を捩らせた。昂ぶるままに肌を食む。
「っん、あまり、痕をつけるんじゃない……」
「ご安心を。お召し物で隠れます」
「そうじゃなくて、あっ……見るたび、思い出してしまうだろう……」
「……忘れられないよう、毎日つけて差し上げますよ」
「それは……いやじゃないから、こまる……」
恥じらいにけぶる瞳を逸らして、ぽつりとそんな愛を吐く。喉笛に食らいつきたい衝動に駆られるが、甘く噛むにとどめて、従順な獣のふりをした。牙を突き立てて奪うより、丁寧に可愛がってとろかして、この人のすべてを仕留めてしまいたかった。
男の膨れ上がった執着にねぶられてなお高嶺に咲き誇る人の手のひらが、つうとひそやかに背筋をなぞる。頬に吐息を感じ、キスをくれるのかと期待した瞬間、とっておきの囁き声が鼓膜を撫でた。
「私のかわいいホムラ。くちびる以外でも、もっとお前を感じさせてくれないか……?」
ゼロ距離で放たれる、とどめとばかりの、はにかむ笑顔。
眩すぎて世界が霞んだ。
「はっ……!!」
灼熱の幸福が全身にこだまする。沸騰する愛と欲望に満ちた手つきで柳腰をなぞり下ろせば、生白い肌がぴくんとさざめいて、淫猥な吐息が空気に溶けた。
身を起こし、背から白い手が滑り落ちたのを惜しむ暇もなく、中途半端にわだかまっていた衣服をすべて脱ぎ去る。マツブサ様の下肢も露わにしようと手をかけると、唇にひたりと人差し指の静止がかかった。
息を呑む。艶やかなくちびるは何も語らず、ただ、情欲を孕んだ瞳が笑んでいる。
この期に及んで、まだ焦らすおつもりか。
すぐにでも善がり狂わせて差し上げたいのに、きっとまた『可愛がられて』しまうのだ。けれどその予感にも昂ぶるばかりで、逞しい身体を華奢な身体にぴたりと重ねて、思いきりベッドに埋めた。
「ぅぐ」と唸ったかわいい人に、にこりと笑顔を差し上げる。手出しを禁じられようとも、奉仕する方法ならいくらでもあると、思い至っていただくために。
厚い胸筋で薄い胸の頂きを押し潰すと、マツブサ様が可憐に鳴いた。
「あっ、重いぞ……こら、こすっちゃ……ア、ん、んぅっ」
互いの肌が吸い付いて、しっとりと皮膚が惹かれ合う。尖りきった乳首を愛で転がすように、押し付けた上体をねちっこく揺り動かす。先端同士を合わせるように擦ってみれば、「あっ、もっと……」なんて素直にねだられた。抗議のつもりだったのに、感じ入る様子がただ嬉しくて、ますますご奉仕をしたくなる。
二人して、前戯だけでどろどろだ。ずっとこのまま、という澄んだ思いと、奥の奥まで受け容れてほしいという欲望が煮えたぎる。そこに、「は、ぁふ、あ、」と喘ぐくちびるに天使のようなキスをされて、やはりくまなく犯し尽くして差し上げなくては、と怒涛の勢いでペニスに血が集まっていく。
「っんン、やっ……も、気持ちよくってダメだ! ふふ……」
「おみ足も、可愛がらせてください、まつぶささま」
「あはは! あっ、ン……いいぞ、好きにしなさい」
「はっ……!」
待てが解かれた!
早急に下肢のお召し物に手をかけて、湿った感触に気がついた。外側を私の白濁に穢された黒のスラックス、その股間部分が、内側からしっとりと濡れている。思わずお顔を見つめると、口元を隠すように翳された手指の隙間から、美しく白い歯がこぼれた。
「んっ、ホムラ……。私、触れられてもいないのに達してしまったのだ。濡れて、きもちわるいったら……。ふふ、脱がせなさい、はやく」
「ああっ、マツブサ様……」
いたずらな笑顔がまばゆく光る。腰を掴む私の手を、たおやかな指がなぞって離れた。
性急に、けれど恭しく、衣服をずり下ろす。マツブサ様は、お尻をわずかに持ち上げると、服を抜かれるのに合わせて、爪先で宙を掻いた。
下着を履いていらっしゃらない、頭ではそうわかっていたが、実際に瑞々しい生肌がお目見えすると、鮮烈に心が眩んだ。
頭をもたげる綺麗なペニスをじっと見つめる。伸ばされた手がそれを覆い隠した。ちらと見やれば、上気した頬が、むっとむくれて先を促している。
可愛らしくて、つい声をこぼして笑っていると、愛しいくちびるがますますツンと尖っていった。へそを曲げられてしまわぬうちに、引っかかっていたスラックスと靴下を抜いて放る。丁寧な手入れの賜物、年の頃を伺わせない美の象徴たるおみ足が、つまびらかに目前に晒された。
私を魅了してやまない人の、艶やかな腰のライン、そこからすらりと伸びる脚、喉から手が出るぐらい欲してたまらないそれらが、お好きにどうぞと差し出されている。
愉悦に喉を鳴らして、腿からつま先まで指でなぞって味わう。張りのある、絹のような手触りだ。視線を合わせたまま身を引いて、形よい爪先を優しく咥えた。
夢にまで見た『私の』足だ。繊細な飴細工を味わうように、熱い舌で包んで甘やかす。
マツブサ様がぞくりと身を震わせた。花のかんばせを見つめたまま、口に含んだ指を、爪の形のわかるほど念入りに、指の股を溶かすほどしつこく、ねぶって吸って慈しむ。
「あ……っ、そこばっかり、やめなさい……」
そんな風にたしなめながら、まんざらでもなさそうに色づいて、視線はこちらを捉えたままでいる。咎められようと、吸い付かずにはいられまい。
一本一本順繰りに舐めあげて、指の付け根の窪みから白い足裏の盛り上がりまで、丹念に舌を這わせる。マツブサ様の吐息が甘く掠れていくのに口端を上げて、親指と人差指の間のやわい皮膚をねぶり犯し続けていると、耐えかねたようにつま先が逃げていってしまった。
口の中が寂しくなって、けれどすぐに舞い戻ってきたふやけた足指が、目の前でぐねぐねと動いてみせて、私の顎を持ち上げた。
「しゃぶってばかりいないで、ほら……。大好きなコレで、どうしてほしいか言ってみなさい」
「は、ア、……もっと、触れたい、触れてほしいっ……です」
「触れるだけ? ……」
真白い足裏が、首筋をぺとりと吸った。窪みが気持ちよく合わさるところを探すように、柔らかなそれが鎖骨の上を這っていく。私の肩口を蹴遊ぶのにあわせて、しなやかなふくらはぎが盛り上がって美しさを知らしめる。
懇願の言葉をこぼしかけた口を、土踏まずが塞いで覆った。こみ上げた恋慕が喉奥に詰まって息苦しい。何もかもを許すような微笑みに見守られ、淫欲まかせの舌使いでべろりと舐める。
「あっ、……こぉら。めっ」
くすくすと甘やかな声とともに柔肌が口元を発って、淡い血管が浮く足の甲、まろみのある踵、ぷくりと膨らむ血管をのせたくるぶしが翻り、余すことなく魅せつけられる。目も心も奪われる中、つま先にこしょこしょと顎をくすぐられ、恍惚に鼓動が跳ねた。
「はあっ、まつぶささまっ……」
「ふふっ……。夢みたいに、お前のおちんちん、ぐちゃぐちゃにしてやろうか……?」
からかうというより、もはや期待さえ滲むいやらしい口ぶりに、ぷつりと箍を外された。
弄ぶ脚をつかまえて、足裏をくすぐる。途端に「やうっ」と身を引こうとするのを、足首を掴んで逃さずに、ぐっと膝を曲げて胸元に寄せる。
窪みをくすぐり続けながら、くちびるはつま先からすねへ、膝横を通って内ももへと、軌跡を残さぬ淡いくちづけで辿りゆき、足の付根まで上り詰めたところで、目を合わせたまま性器の付け根にキスをした。
「あっ、や、このっ……!」
「今度は私が、マツブサ様をぐちゃぐちゃに溶かして差し上げます」
「ホム、……っア!?」
頬の横でぷるりと揺れる、マツブサ様の根本に舌を這わせた。
「あっ! ふ、あぁっ……!」
唾液をたっぷりまとった舌で、ねろねろと竿全体をねぶり犯す。震える肌に煽られながら、根本を掴んで先端を口に含めば、途端に半身が仰け反って、甘美な嬌声が胸を打った。
いじらしく膨らんだそれを舐め蕩かしながら飲み込んでいく。根本までしゃぶり尽くして差し上げたいが、深く咥えては『恥ずかしくって死んじゃう』と、こちらが殺されそうな科白をいただいた前科があるので、すぼめた唇と喉で中ほどまで愛でながら、根本を指ですばやく抜き上げた。びくびくと爪先がソファを掻いて、内ももに顔を挟まれる。
「ほむ、っふ、ン、あ、ぁあっ……!」
優しく柔らかく、裏筋をくすぐり舐める。今にも極まりそうな声があがって、弱々しい手のひらに、くしゃりと髪を掴まれた。指先でかきまぜるように頭を撫でられて、ぞわぞわと肌が喜びに震える。
敏感に跳ねる生白い腹を堪能し、獰猛に貪り続けていると、互いの体液で口周りがべたついてきた。ご馳走にがっつく犬さながら、みっともないが――知るか、もう。
冷静さなど、とうの昔に欠いている。かわいい人のかわいいところを奉仕して、とびきりの痴態を堪能する、こんな至福が他にあろうか。
「あぁ、あっ、やめ、まえ、ばっかりっ……うぅ……!」
「……っ」
しゃぶり蕩かそうと上下する頭を、震える手のひらが押しとどめた。
突き入れる悦びよりも穿たれる享楽を望む、そんなお身体になったのは、ひとえに私の丹精込めた溺愛ゆえだ。
宥めるように前を愛撫するのにあわせて、奥まった秘部へと手を伸ばし、会陰に指を這わせる。くんっと押し上げ刺激すると、ひときわ大きく声が震えた。
「あっ、あぁっ、んぅ……ほ、むらぁっ」
「ン、あふうああ、っん」
「あううっ、くわえたまましゃべるなぁっ……! っア、ッぁああっ……!!」
赤毛を振り乱し悶絶するさまに煽られて、舌と手の奉仕を強める。搾り尽くすつもりで亀頭をじゅうと吸い上げると、マツブサ様の身体ががくがくと痙攣して、ぴんとつま先が伸ばされた。口内にほろ苦くも甘い愛が広がっていく。舌に絡めて、ぬるついた先端を労るように舐めていると、髪に埋まっていた手がはたりと落ちた。
ゆっくりと頭を引いてペニスを解放し、一滴も残さず味わい飲み下す。濡れた性器越しに見上げれば、はくはくと喘いで仰け反った顎の下、キスマークに侵されて火照った首筋が、汗ばんで艶めいていた。満ち足りた気分が、マツブサ様のすべてを渇望する欲に塗りつぶされていく。
貪婪な獣性は明かさず、鈴口にくちづけて、ちゅうと吸い上げた。
「んぅ、はぁっ、は……」
「たっぷり可愛がっていただいたお礼です」
「うぅ、く、なまいきな……」
時折ぴくんと肌が粟立つも、愛しい人は未だ荒い吐息をこぼして、たゆげに脱力していらっしゃる。気怠げな息遣いがにじんで、しずしずと脚が開いていく。濡れたまたぐらに誘い込まれて、奥の窄まりへ指を滑らせ、縁の皺ひとつひとつを慈しむようになぞって楽しむ。
ぎゅうと窄まったそこへ、人差し指がつぷりと飲み込まれていく。濡れるはずのないそこが、ぬかるみ、ほぐれて、熱く指を抱きとめた。
下腹を駆ける熱に唇をひと舐めし、欲深な視線で穿つ。こんなところにローションまで仕込んでおきながら、焦らしに焦らしてくれたご主人様は、両手で顔を覆って黙りこんでいる。表情は窺えずとも、耳まで茹だっているものだから、こちらまで頬が熱くなった。
「ご自身で馴らして……?」
「……待っていたと、っん、言ったろう。だから、ゆび、じゃなくて……」
細指の隙間で揺れる瞳が、あからさまに男をねだる。腕が伸びてきて、やわな指の腹が私の手首をなぞった。寄せられた眉根、愛くるしいおねだりに見舞われて、心が浮つきよろめきかける。
「は、いえ、十分にほぐしませんと」
「私は今すぐお前が欲しいのに……?」
「っ……、いけません、マツブサ様」
「ふふ、いじわるめ……。っあ! んう、そこっ……!」
どのお口が、ああもうかわいい、とこめかみに青筋を立て、突き入れた指先で腹側にある急所を押し潰せば、からかい笑んでいたくちびるから嬌声が溢れて、マツブサ様の全身がどろどろに熟れていく。
狭いそこに中指もつぷつぷと飲み込ませ、きつく食まれた二本指で円を描くように入り口をくじり続けていると、「あっ、ほむらぁっ……」と悦楽に溶けたかんばせの上から両手がそろりと立ち退いて、切ないくちびるが細指を咥えた。
うっとりと法悦にひたる瞳に見つめられ、腰が甘く痺れる。
「も、ゆび……、いいからっ……」
「マツブサさま……」
「ンぅ、はやくっ……きなさい、ほむら……」
「っぐ……!」
マツブサ様を慮って滾り勃つペニスを、婀娜めく逆手が扱き上げる。
おイタが過ぎる手のひらを掴んでぬめる先端を擦りつけてやれば、自分から手を出しておきながら、ビクンと跳ねた赤い頭がイヤイヤと振られて、襟足が頬をくすぐった。
腸壁を擦り上げながら、夢中で薄い胸にむしゃぶりつく。小さな突起を舐めると、無垢な肌が震えて、途端に高まった手に頭を抱え込まれた。乳首を掠めては羽のようになぞりあげ、もどかしいほど恭しく舌をそよがせながら、ぐちぐちと胎内を押し拡げてゆく。
「っ、ほむ、ほむら、ん、ふ、ぁ、あっ」
「はァッ……」
ゴム、は、ない。取りに行く隙も、余裕さえ、締め付けられた指先から吸い取られて、茹だる頭ではもはや屹立を突き入れることしか考えられなかった。
挿れたい、ぐじゅぐじゅに突き動かして、マツブサ様のすべてに溺れたい、……
ひたぶる心に燃えるおもてが、滑らかな両手に包まれた。鼻っ面を擦り付け唸る。耳の付け根をたどる指先、輪郭をあわく撫でる手のひら、こちらを見据えるご主人様の容赦無い眼差しに、理性の鎧が剥ぎ取られていく。
「おいで、ホムラ。ここで……っン、」
びしょびしょに濡れて蜜垂れる声が、こくり、と吐息をのんだ。
「めいっぱい甘やかしてやるから、ほら……っ」
きゅうっと菊座がすぼまって、指より太い愛をねだった。
──熱に浮かされた頭が爆ぜる。
「はあっ、はっ、マツブサさまッ……!」
指を引き抜き、太ももを抱え上げる。親指でくぱ、と開かせた入り口に切っ先を宛てがえば、ひくつくそこにちゅうと甘く吸い付かれ、溺れる心地でぐっと腰を突き入れた。
「はっ、あう、っふ……~~ッぐぅ……!」
「う、……はッ……」
「っく、ン、んっ、あぁっ、ほむら……っ」
みちみちと拡がる後孔に太いところを飲み込ませ、背中に縋り付かれるのを感じながら、ゆっくりと身を沈めていく。狭くて柔くてぬるぬるで、溶けそうなほど熱くって、頭がおかしくなるほど気持ちいい。男を知らぬ顔をして、きゅんきゅんと淫乱に蠢くそこが、私を食いちぎらんばかりに咥え込んで奥へ奥へと誘っていく。
荒い息遣い、滴る汗、生々しく繋がった肉体の悦びに、無茶苦茶に腰を振りたい衝動に駆られるが、愛しい人の瞑った目尻に浮かんだ雫を指ですくって、大きく息をつき、中が馴染むのをじっと待つ。
くちびるに、頬に、くちづけを落とせば、マツブサ様はとろんと瞳を潤ませて、こくりと喉仏を上下させた。「ホムラ……」なんて喜色鮮やかな無上の愛をくちびるにのせて、私を包み込んでいるところ、白くなよやかな下腹を、愛おしげに撫でている。心臓が早鐘を打ち、マツブサ様を穿つ愛がますますかさを増していく。
私に縋り付く身体の強張りが解けてきたのを感じて、優しく前後に揺すり上げた。
「あっ……! く、ン、いい……ふ、」
「っは、ふわふわで、きもちい、です、マツブサ様っ……」
「ん、ん、う……っあ、あふっ、は、んっ、んぅ」
とん、とん、と穏やかなストロークで、けれど容赦なく前立腺のしこりを押し上げ内側をかき乱せば、苦悶にも似た表情で感じ入るくちびるから、甘い喘声が蕩けだした。かぶりついて直に吐息を貪りながら、ずりずりとペニスを引き抜いて、一息に奥まで突き入れる。華奢な身体が弓なりに反って、背に爪が立てられた。鋭く走る痛みにさえ掻き立てられて、自ら腰を押し当ててきたかわいい人に応えるように、獰猛に穿ち突き動かす。
「っ、う、ああっ、あっ、ほむっ、ア、……ぁああっ……!!」
双丘がほのかに赤味さし、湿った肌がひっついては引き離されて、肉を打つ卑猥な音が響き渡る。ずっとこの熱に甘やかしてほしくって、今にも果ててしまいそうなのを我慢しているさなか、マツブサ様がびくびくと痙攣して、後孔が熱烈に締まった。射精せず絶頂に達したらしい。何度も強く絞られて、歯を食いしばって耐える。獣のような声を上げ、密着したままぐりぐりと腰を回し犯していると、首元にビリリと刺激が走った。──噛まれた。マツブサ様の、小さなお口に。
法悦の息をついたのと、腰を突き上げたのと、どちらが先だったろうか。
硬く張り詰めたもので奥まで抉って、甲高い嬌声をあげた身体を強く抱きしめる。ぐうっと締め付けられて、身も心もマツブサ様の深いところに愛される。けれど今目指すべきは最奥ではない。
「っ、あ、あ、ン、ほむら、ぁっ」
「はっ……ふ、マツブサ様……」
縁ぎりぎりまでペニスを引き抜く。逃すまいと収縮した後孔に強く亀頭を締め付けられて、ぐりぐりと窄まりの奥へ身を沈めては引き返し、浅いところばかりねちっこく擦りつければ、くちびるを噛んだ涙目に睨めつけられて、ふっと微笑がこぼれた。前立腺の膨らみにカリを引っ掛けるようにグラインドし、思い切りそこばかり攻め立てる。
「あっ、あ、あぁっ……! うあっ、や、ア、あぁっ」
「っふ、マツブサ様の大好きなところ、たくさん愛して差し上げますねっ……」
「あ、あ、ひっう、や、だめ、もっ、またいく、ぁ、いっちゃ、~~ッアああ……!」
「は、一緒に、く、マツブサ様っ……」
絶頂を予感し、ペニスを引き抜こうとした瞬間。──長い両足が、がしりと私の胴に絡みついた。
喰われる、そう直感が囁いて、歓びに心が躍る。マツブサ様が、至極楽しそうに喉を鳴らして、果てる寸前の獲物を引き寄せた。
「っあ、マツブサ様っ、もっ……でる、でます、から、」
「ん、はぁっ、いいぞ、出しなさいっ……」
射精寸前の剛直がびくびくと脈打った。散り散りの理性をかき集めて腰を引こうとして、まとわりつく四肢に引き戻されてぐちゅりと最奥へ分け入った。マツブサ様の艶めかしい息遣いに耳を犯され、幸福に気が遠くなる。愛しい身体を掻き抱いて、根本までむしゃぶりついて離さない胎内のいっとう深いところまで、本能のまま穿ちねじ込んだ。
絡みつく襞が激しく収縮し、ぎゅうっとひときわ情熱的に搾り取られる。
「あっ、は、ほむらぁっ……ア、っぁは、ぁああッ……~~~~っ!」
「ぐっ……う、まつぶささまぁっ……」
肩口に顔を埋めて歯を食いしばる。強すぎる快感に視界が明滅し、びゅくびゅくと迸る精液がマツブサ様の中に注ぎ込まれる。ひとつになるほど縋り付かれて、多幸感に頭が真っ白になって、……また、首筋に、噛みつかれている、そう気がついた時には、ずぶずぶに受け入れてくれる身体に溺れきって、ふたり全身で息をしていた。
無意識に、最後の一滴まで出し切るように、ぐちゅ、と揺すりかき混ぜる。「んうっ……」と艶めく嬌声に素肌をなぶられ、ハ、と我に返ってペニスを引き抜いた。それにすら感じ入る美声があがり、醒めゆくはずの心がぐちゃぐちゃにかき乱される。くてんと脱力したお身体は、未だ私を大事に抱きしめて離さない。
「はぁっ……はっ……、ン、いっぱい出せたな……」
「中に、申し訳ありません、早くシャワーを……」
「いい。さっき口に貰えなかった分だ。っん、……それより、」
「まだ出せるな……?」なんて首を傾げられ、止まりかけた心臓の上を、淫靡な手のひらがうっそりと撫で上げた。途端、尽きぬ期待に鼓動がはずんで、みるみるうちに気合がみなぎっていく。
このままもう一回、なんて唆されでもしたら、きっともう抗えない。それどころか、一回で止まれる自信もなかった。
ぐるぐると犬のように唸って応える。痩躯を姫抱きにして、丸め込まれる前にシャワーブースへずんずん突き進む。おとなしく抱え上げられたマツブサ様は、ゆさゆさと揺れる振動に愉快そうにおとがいを解いて、両腕を私の首にまわして胸元に擦り寄り懐いている。密着する素肌どころか、裸足に刺さるマットの毛先までもが妙に神経を刺激して、下半身が苛立って仕方がない。
中出しなど失態もいいところだ。これ以上の無体は働くまいと気を引き締めて、腕の中のマツブサ様を抱き直しながら「煽るのはおやめください」と低く唸った。すると、よしよしわしゃわしゃと愛情に満ちた手のひらに頭を撫で乱されて、そのうえ、嬉しそうにほころんだあどけないくちびるに、ちうと頬を吸われてしまった。
…………ので、完膚なきまでに陥落した。
結果、シャワールームにもつれ込んだあと、精液を掻き出すだなんだと再び繋がって、ベッドに戻ってお身体が冷えてはいけないからと温もりを分かち合い、更には、ぐでんぐでんに蕩けて力の入らぬありさまで私に乗りたがるマツブサ様を下からあやして、二人して笑いが止まらぬ程ぐだついた騎乗位を満喫し、それから、……言うには及ぶまい。
愛する主君と過ごす夜は酩酊とともに深まって、可愛がって可愛がられて、甘やかし甘やかされて戯れて、燃え尽きることなきほむらのように情熱的なものである。
畳む
※後朝は蛇足だったため消しました。
一部の聡いしたっぱたちにはバレバレで、ツートップが仲睦まじくておめでたい!と祝福されています。
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